Transparent lie

レジ前のガム・飴コーナーが切れそうになってたんで補充していると、
後ろから視線を感じた。

視線の主はわかってる。つーかその時２人しかいねーし。

振り返るのもなんか嫌で黙々と作業に徹しようとしたとき
「ねぇ、栄人さんってさぁ〜」
と声を掛けられた。くそ！なんだよもう！！

…別にとりわけ忙しいわけでもなかったが、
その緊張感のない間延びした声が癇に障った。
とはいえ、呼ばれて返事しないわけにはいかない。大人だからな。

「なに？」
イラつきを声に載せないように、精一杯平静を装って返事する。

そんな密やかな俺の努力を知ってか知らずか
声の主は相変わらず語尾を伸ばして続けてくる。

「なんか今思っただけなんだけどぉ〜　ココの制服似合わないっすよねぇ〜ｗ」

…必要か？今その報告必要か？思っただけならそのまま心に留めておけ。
と思いながら俺も続ける。

「そうかなぁ〜確かに、普段はこんな明るい色着ないですけどね？」
…というかこんなオレンジ似合ってたまるか！ボケ！

そういうお前はとてもよくお似合いだぞ。この真オレンジが。
やーほんと。こんなにオレンジ着こなせるの
ゴクウかクリリンかヤムチャがお前しかいないんじゃね？
って口から出そうになった時、

「あー！あとそれ！！それなんでっすかぁ〜」
とアホっぽい声が遮った。

「あ゛？」
っと思わず低い声が出た。多分俺、かなり眉間にしわよってた。
…鏡ねぇからわかんないけど。

「栄人さん、敬語入るっすよね〜時々。年下相手だよ〜」
……知ってんよ。
つーか時々、敬語が入る俺のことより、時々タメ口挟むお前の方が問題だろ。オイ。

「別に意味はないんですよ。」
何気ない顔で作業に戻りながら返事する。
でもメントスの箱開けるとき若干乱暴に破いた。八当たり。

「みんなにそうなん？　タメも年下も？」
…だから時々、敬語が入る俺より（ｒｙ
返事するのやめちゃおうかなとも思ったけど、…レジからこっち見てるし。
振り向いて、煙草の棚のほうに目線そらして

「ん〜『仲がいい人』には普通だよ。」
と言ってみた。さり気なく『お前とは仲良くないからな』って意味で。

…したらなんか何がツボったのか知らないが満面の笑みで
「じゃ〜敬語なしで！！」
っつって自分も外のゴミ回収に行った。

つーか待て。……お前は、敬語使えよ？


・・・・・・・・・・・・・・新人類には通じなかった。日本語。