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爺放談


 ■ 2008/10/28 (火) 波乱万丈21


仕事が終わった・・・・

帰路に付く・・・・

アパートに到着・・・・

いつもの様に電気のつかない部屋へ入る・・・・

腹が減った・・・・

何かあるか?・・・・

残り少ない何時ものインスタント・・・・

器に空け、水を入れる・・・・

「キュッ」・・・・

うん?・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



そうなんです、とうとう水を止められたのです。

水を止められたと言うことは、蛇口から水が出ないのは当然ですが、その他に、トイレも流せないと言うことです。

私は、それまで水というものがどれほど価値があったのか?と言うことを考えたこともありませんし、蛇口をひねれば絶対に出てくるものと思っていました。

それがこの状況になって、初めて気づいたのです。
水がどれほど貴重で、生活をするに至ってどれほど重要な物であるかを、出なくなって切実に身に染みて分かったのです。

「俺はアホや、何で気付けへんかったんや、こんなことよう考えたら当たり前やんけ、
水止められたら何もでけへんやんか!トイレも流されへんから溜まる一方や、どないしたらええねん!」

そんなことをいまさら言っても後の祭りです。

私の所持金はその時、次の給料日まで僅かしか残っていません、しかもそれはまだ先です、おまけに次の給料は中途半端な分しか出ません、とてもその方面に回せるほどの余裕などある訳も無く、また、今の職場は食事つきではありませんから、ほとんど八方ふさがりの状態です。

「くそう!やっぱり飯付を探すべきやったんや!せやけど付いてると思ったんやけどな、そんなこと今更言うてもしょうがない・・・・」

「どないかせなあかん!」

「仕方ないから、公園まで歩いていって水を持ってくるか?」

「トイレは公園でして、必要な分だけ何かに入れて確保するか?」

「でも何に入れる?・・・・」

当時は現在のように何リットルも入るペットボトルなどはそんなに無く、1リットルがせいぜいです。

それでもしばらくは、それでどうにか暮らせて来ましたが・・・・・

「コン・コン」

「う〜ん、誰や寝てんのにうるさいな〜」

「コン・コン」

「はい!どちらですか?」

「はっ!やばい!返事してもうた!不動産屋かもしれん!寝込み襲われてもうた!頼む!不動産屋はやめてくれ!」

しかし、その願いむなしくだったのです。

「○○さん、これまで幾度と無く、再三の通知と、何度もお尋ねしたのですがお留守だったようで・・・・」

「それでですね、これまでの姿勢や今後も考えますとこれ以上ここを貴方にお貸しすると言う事は大変困難であると、大家さんとの話し合いで決まりました。」

「・・・・・・・・・」

「つきましては、貴方の事情もあることでしょうし、今月一杯でここを明け渡すようよろしくお願いします。」

「ちょっ!ちょっと待って下さい!本当に申し訳無かったです!今ようやく仕事も決まってこれからはお支払いもいっぺんには無理ですが払って行こうと思っていました。
ですからもう少し、後もう少し待って貰えないですか?
本当にすみませんが・・本当に全ては私が悪いのですがお願いできませんか?」

「○○さん!大変申し訳ないが言わせて貰いますよ!私らも大分前から言って来ましたよ!本当ならもっと前にこうなってても不思議じゃないですよ。
おまけにこの大家さんは良い人ですよ、本来なら出て行く際、現状復帰の為に費用を請求するものですが、それも無し、それよりも貴方がここに入る際に本来必要な保証人も取らなかったので貴方が延滞している家賃も全部、大家がかぶることになったのですよ。」

「・・・・・・・・・・」

「わたしはあまり多くは言いたくないですが、あなたはちょっと社会をなめてますね!
家賃の件は大家も甘い面があるから強くは言えませんが、でも、こんな大家だから貴方はずいぶん助かっているのですよ。
そのことを踏まえれば貴方がこれ以上何かを要求するって・・どれだけ甘えているかを考えて仰って下さい!」

「すみません、言われている通りです、良く分かります、でも、他に行くとこがないんです」

「そんなことは私の知る限りではありません」

「本当なんです!本当にどこにも行くとこがないんです、お願いします!お願いします!」

「○○さん そこまでして東京に居る必要が無いんじゃないですか?私は故郷に帰ることをお勧めしますよ」

「すみません!故郷へは帰れません!どうしても帰れないんです!」

「では、親御さんに事情を説明してお金を送ってもらえば良いじゃないですか?
今の若い方々は皆そうしていますし・・・」

「無理です!それは絶対に無理です!」

「ご兄弟は?」

「いますが、それも無理なんです!」

「ではどうすることも出来ませんね、私どもも大損をしています、おまけに貴方のおかげで信用も失いそうなんです、貴方の言い分は貴方の都合ばかりですね・・・・・
結局は何も変わりませんので、今月にはここを空けてください、これ以上はお話はありませんのでこれで失礼します・・・・・」

「あ・ぁ・・・・・」


不動産屋の言うとおりです。

全く何も言い返せません。

確かに自業自得なのです、しかしその時の私は目の前が真っ暗になると同時に色々な事が頭を駆け巡りました。

家の事、母のこと、姉のこと、兄のこと、そして・・・自分のこと・・・・・

「いったい俺はどうなるんや?」

「ひょっとしたら死ぬんちゃうか?」

「もう本当に何もあらへん!こんなんやったら来ぇへんかったら良かった」

「おかぁちゃん、おねぇちゃん、おにぃちゃん・・・・・・」

「もう会えへんかもしれん・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」




もうすぐ、東京にも冷たい風が吹く頃です・・・・





名前

内容

ホームレス サイコロさん これが小泉君の言っていた三位一体の改革ですか?・・・・反省の色無し! すみまっせ〜ん!(^^;) (08/10/30 04:48)
サイコロ お気の毒です。ホームレスさんも大家さんも、そして、その間に立っていらした不動産屋さんも・・・・・お金があれば、こんな苦労をしなくて済むのに。よく、仕事の関係で、家賃を支払ってくれないと言われる大家さんから相談を受けることがあるのですが、・・・大家さんも、わずかな年金に加え、家を貸すことによって生計を立てていらっしゃるケースもあって、そのような話を聞くと、どちらも大変だな〜って思ってしまいます。 (08/10/29 00:06)
ホームレス 壷中の天さん えっ!天さん えっ! あっ!あの〜、え・えい・映画のは・話は・・・・い・いえ・聞かなかったことにしてください・・・しょぼん....^^ (08/10/28 22:19)
壷中の天 文章の間に「会話」が頻繁に入って臨場感がありますね。次回作もよろしく。 (08/10/28 22:10)
ホームレス まりあさん 備えあれば憂い無し!どんな時も備えがあれば気持ちも充実!^^え〜っと、貯金の方は如何ほど?・・^^ (08/10/28 21:43)
ホームレス めとろんさん へへ!そんなに誉めないでください・・・・へへへ・・・(^^;) (08/10/28 21:38)
まりあ 大変な過去でしたね。水道が止まるとショックですよね。公園の蛇口には使用利用防止目的に、水栓付きの蛇口がありますよね。私は万が一に備えて水栓解除用の【呼び13,呼び20(四角対辺8~7テーパー用)】と呼ばれる、水栓解除パーツを非難袋に入れています(^_^;) あっ、私は怪しいモノではありませんよw (08/10/28 21:08)
めとろん 悪い奴やなあ・・・ (08/10/28 20:49)


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