爺放談

最近ニュースで日本が世界に誇るテノール歌手が「覚せい剤所持で逮捕」のニュースを見た・・・・・

彼の詳細をワイドショーでやっていたのを見たのですが彼はウィーン国立歌劇場と専属契約を結ぶなどクラッシック界では華々しい経歴の持ち主なのだが現実は、逮捕当時に住んでいた所はごく普通のアパート暮らしをしていたようです。

私はそのニュースを見たとき、今はもうあまり付き合いはありませんが多分今も活躍していると思いますが日本のジャズ界では知る人ぞ知る名ジャズギターリスト「名前は伏せておきます」を思い出しました。

その方とはプライベートの付き合いで、その方の紹介でその方面の他の方達もたくさん知り合いが出来、日本の音楽界や芸能界の裏話などをよく教えていただいたものです。

だいたいこの日本でジャズで生計を立てようとすることはほとんど無理で、その方々はどうやってご飯を食べて行くかというと、そのほとんどはスタジオミュージシャンとして生計を立てていっている方が多いようです。

それ以外の方達はもう完全に趣味にして、全く違う職種で生計を立てるとしているようです。

もちろんそのギターリストは、やはりスタジオミュージシャンとして生計を立て、自分の好きなジャズは少ないギャラで時折呼ばれるステージを演奏したり、ジャズＣＤの制作、ジャズ公演をすると言うような日々を過ごしているのです。

そんなスタジオミュージシャン達も過去は華々しい生活をしていたようです。

日本の高度成長期、銀座や赤坂、新宿と生バンドが入っているクラブやキャバレーが軒を連ね、それが好評でスタジオミュージシャンの需要がすごくあり、ひっぱりだこだったそうです。

その方達の話によると、一日「一回のステージ」で多いお店では５万とか１０万とか有ったそうです。

あまりに需要が多かったためミュージシャンが足らず、店によっては弾ける人が数人で、それでは箔が足りないということで全く弾けなくとも数合わせで駆け出しのミュージシャンまで要れ、その方達にも有る程度のギャラを払ったといいます。

しかし、そんな栄光の日々も当然長くは続かず、そんな彼らを襲った最大の出来事の一つに「昭和天皇の崩御」でした。

当時の日本は粛々の日々、マスコミ、繁華街、歓楽街が一斉に自粛！そんな中、鳴り物が活躍できる場所などあるはずも無く、しかもその自粛期間が長かったため、生バンドが入っているクラブやバー、キャバレーと、ほとんど閉店に追い込まれたり改装して個室カラオケ店になったりと・・・

それからというものスタジオミュージシャンにとって受難続きで追い討ちとして「バブル崩壊」

この時点で多くのスタジオミュージシャンは転職を余儀なくされ、やめて行った人達も多く居たと言っていました。

そんな中でも粘り強く、その知り合いのギターリストの様な「音楽で生きて行きたい」と言う強い意志を持った人達が今も続けて行っているのです。

今も続けているスタジオミュージシャン達は運の良い方は、現在売れている歌手の専属のバックバンドになったり、演歌歌手の専属になって地方を回ったりして、なんとか生計を立てていますがそれは運が良い方で、大抵はたまにあるＴＶ放送のフルバンドの穴埋めや、誰か歌手のレコーディングの為の演奏、コマーシャル製作などなど、常に不定期な仕事をやりくりしてなんとか生きていっているそうです。

ギャラも全盛期に比べれば愕然と落ち、一月生活するのに常にあっぷあっぷの生活をしているようです。

そんなものですから、そのギターリストの彼も生活は大変そうで、彼の住んでいる所は東京は都下の古いアパートに住んでいます。

その彼は先も述べましたが、日本のジャズ雑誌では常に日本の名ジャズギターリストとして名前が挙がり！その筋では大変な人物なのです。

私も彼の弾いた曲を良く耳にしたものですが実力は相当なもので、彼の弾いたボサノバの名曲「イパネマの娘」は今も耳に残っております。

世の中には色々な物を目指す方々は多く居ますが、その目指すもので生計を立てると言うとその範囲は極端に狭まれます。

要するにその目指すものが大衆受けしているものかどうかが分かれ目になります。

例えば音楽と言うこれほど大衆受けしているものでもジャンルが絞られます。

音楽ではロックかポップス！それ以外はどれほどその筋で有名になろうと生計を立てるほどになると困難極まりないものです。

ジャズの本場であるアメリカでも、それだけで食べているという人はなかなか居ないと言います。

そんな実力や名声のある彼ですがスゴク性格が良くて、優しく、頭が低く、人が良いのです！

その彼が私と居るときに時折出す生活の苦しさが何か悲しさを覚えるのです。

しかしそんな、あまり光の当たらない物を一生懸命やって、あらゆる困難を乗り越えながらも続けていってくれている人々が居るおかげで私たち庶民は多くの文化に触れることが出来ているのです。

その功績はお金には変えられないものでしょう！

出来ればそんな人達にも、せめてそれだけで生計を立てれるほどの報酬が有ってもいいとは思うのですがなかなか難しいでしょう。

でもその彼はそんな現在の境遇でも何の弱音も吐かないどころか私にこう言います。




「俺はこれしか出来ないし、それでも何とかこれで飯が食えるのだから幸せなんだ！」



「○○ちゃん！ジャズって最高だよ！」