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爺放談


 ■ 2014/06/09 (月) 再会


最近の話であるが久しぶりに兄と会った。

それはある事から兄が初めてここ沖縄にくる用事があったからだ。

突然私の携帯に電話があり、沖縄に行くから久しぶりに会おうという事だ。

私もずいぶんと会っていなかったため、そのお誘いに乗ったのだ。

兄は初めての沖縄だけにせっかく行くのだから用事が終わってからどこか観光案内をさせろと言う事だ。


私と兄はもう本当にずいぶん会ってはいない。

兄がどんな仕事をしているかは何となく知っているが詳しくは分かっていない。

これを機にどの様な仕事をしているのかを詳しく聞きたかった。

ちなみに兄は旧帝大出身で某一流製薬メーカーで研究職に就いている事だけは知っていた。

現在の地位や下衆な話だが給料はいくら貰っているのか?それ以外にどの様な研究内容かを知りたかった。

電話を貰ってから数日たち、いよいよ兄が来るという前日に連絡がきた。

待ち合わせ場所の指定であったのだが、これが驚きと共に興味も更に湧いた。

その待ち合わせ場所はあまり知られてはいないが


「OIST 沖縄科学技術大学院大学」


あまり聞き覚えの無い大学だがここはどういう所かと言うと。

世界の理系の最先端を行く教育を主とした大学で、世界から集められた博士課程の生徒たちを選抜し、更に高度な教育を施し、ノーベル賞を視野に入れた研究開発を積極的に行う機関で、その生徒数は世界から選抜された約50名の優秀な人材を更に優秀な研究者として育てる事が目的の大学である。

教員は約50名、そこにはノーベル賞受賞者はもちろんの事、世界からあらゆる理系分野のTOPクラスの研究者や教授が揃っている。

日本人では理事にあのノーベル賞受賞者である利根川教授が居る。

大学内はもちろん公用語は英語で、そのほかに世界からあらゆる分野の研究者がここに集まっている。

この大学設立は小泉内閣の時に立案され、世界最先端の理系大学と言う名目で建てられた。

そしてこの兄がなんと臨時講師として招待されたというからこれはただ事ではない。

いったいぜんたい兄はどんな奴なのだ?

私も一応理系出身なので興味津々は言うまでもない。

そして当日、私は待ち合わせ場所である大学へ行った。

結局、大学内はいけなくて最寄りのホテルへ向かうよう言われた。

少し残念ではあったがそのホテルへ向かいロビーで待つ事数分、しばらくして兄が現れた。

兄だけが来るものと思っていたがもう一人初老の男性も一緒に来たのだった。

私は軽い会釈と共にその初老の方も一緒なのかすこし困惑した。

しかしその疑念もすぐ無くなった。

兄はそそくさとその初老の方を置きっぱなしに、そして私の方に来て「ひさしぶり!^^」なんてニコニコ顔で・・・・

「どこつれてってくれんの!」

「いや〜本当に久しぶりやな〜!^^」

「元気にしとんか〜〜〜^^」

「仕事はどないや〜〜〜^^」

「彼女はおるんか〜〜〜^^」

私が喋る暇も無くニコニコ顔で、しかもなんか体も自然とノリノリになってはしゃいでいるのだ!

「もう行っていいの?」

「あ〜ええで!はよいこ!」

「あそこのお連れさんはええんか?」

「あ〜あれ?ええ!ええ!あっちもあっちでどっかいくやろ!」

「わかった!ほないこか!」

という訳でとりあえず私は沖縄北部にある名所めぐりに兄を車に乗せ出かけた。

道中、車中で色々と話した。

今回の大学の件や現在兄がしている仕事内容、そのほか聞きたいこともろもろを・・・

話の中で少し気になっていた兄のお連れさんの話になった時、その人物がどの様な人かをその時聞いたが聞いてびっくりなんとその方は薬学博士で東大名誉教授、たまにNHKで私も何度か見たことがあるその人だった。

「あの人とは学会でしょっちゅう一緒になるで!」

「は???」

「別に驚くことないで!変なおっさんやぞ!」

なんなのだ?いったい兄はどんな地位でどんな人物なのだ?

今まで暗に凄いとは思ってはいたが実際は更に、とんでもなく凄い人物なのだろうか?

私の好奇心は更に兄に向け、突っ込んだ話をどしどしだすのであった。


兄は私のする質問全てに何の屈託も無く答えてくれ、それらを要約すると


大手製薬メーカー研究開発チーム室長と言う地位で、兄がそこで開発し特許を取った医薬品は多数、その傍ら世界各国へ研究発表や学会への参加およびそれに伴う各国大学への講師依頼、世界大手医薬品メーカーへの共同研究参加、政府ODA選考委員・・・・・

要するに兄は日本滞在より諸外国の方が多く、そのあらゆる功績により今回「沖縄科学技術大学院大学」に招かれた。


気になるのはこんな奴の年収っていったいいくらなのか?

これまでの質問にはすべて答えてくれたのでいくら兄弟でもこの辺りは聞きにくいものだが敢えて私は聞いてみた。

「しらん!」

「そんな事はないだろう!」

「本当に知らんもん!」

「ほんまに?」

「だって銀行には行けへんし、給料明細なんか見たことない!その辺はみんな嫁が管理しとる!」


考えてみれば確かに知らないかもしれない、兄は基本面倒くさがり屋でしかもお金には興味が無い。

いや、お金だけでなく物欲が無いのだ。

研究者なんてものはこんなものかもしれない、だからかどうかは知らないがその後の兄との行動の中でおかしい事が多々あったからだ。

夜も更けて私は兄を私の行きつけの小料理屋へ連れて行った。


「うぉ〜〜ひさしぶりや〜〜こんなお店来るのん〜〜^^」

「兄貴はあんまり飲みに行けへんの?」

「いかへんいかへん!いや〜〜新鮮やの〜〜!」


少しオーバー気味のリアクションに私は少なくとも気には入ってくれたようなので安心した。

「こちらの方は○○さんのお兄様でいらっしゃいますか?」

このお店の女将がそう聞いてきた。

「あ!女将さん!そうなんですよ!このろくでもない弟の兄なんですわ〜〜!」

「いつも弟がお世話になってます〜〜!なにか弟がおかしい事をしたらすぐ僕に連絡ください!あっ!そう言えばお金!ちゃんとこいつ払ってますか?」

「あははは!ほんと!弟さんそっくりだわ!のりが良いですね!^^」

「え〜〜〜!こんな奴と一緒にしないでください〜〜!こんなセンスのかけらも無い奴と一緒なんて傷つくわ〜〜〜!」

「あら〜〜○○さんって結構モテるんですよ〜!」

「げ!女将さん!いくら弟が常連とはいえ嘘はいけません嘘は!」

「いえいえ!本当なんですよ!だってこのお店の女の子達にも結構人気者ですよ!」

「女将さん・・嘘でしょ?い・いや嘘と言って!兄としてのプライドが・・・」

「はははは!本当にお兄様って面白い!お兄様って吉本の芸人さんですか?^^」


ここで書いたこのくだりは本当の事で、兄の地位や肩書を知らなければ本当に芸人顔負けの陽気な面白いただのおっさんなのだ。

また、そんな何も飾らないし見栄も張らない兄を私は子供のころから尊敬していたし、いつも私はどんな時でも兄を手本にしていたように思う・・・

一件目の小料理屋を後にし、次はまた私の行きつけのラウンジへ兄を連れて行った。

「お前いつもこんな店へ行ってんのか?」

「ま・ま〜な」

「ここって・・お前・・めっちゃええやん!^^」

「そやろ!^^」

この店でも兄は大はしゃぎ!


「きゃ〜!お兄さん面白い〜〜〜!!」

「いやいやいや!普段は僕はめっちゃまじめな仕事をしてるんやで〜〜!」

「あははは!うそ〜〜!で?何の仕事してるの〜?」

「だ〜か〜ら〜!白衣着て〜〜!・・・」

「あ〜〜〜わかった!おいしゃさんごっこ!」

「そうそうそう下半身専門の〜〜〜!なんでやねん〜〜〜」

「あはははは!こんなお兄さんだったら私もほしい〜〜!」

「う〜〜〜ん!よし!あげちゃう!今日から僕は君のおにいさん!」

「やった〜〜〜〜!」

「じゃ今日は仕事終わったら一緒に帰ろうね!^^」

「お兄さんいらない!」

「え〜〜〜〜〜〜〜!!!」


兄が変態な所も私は受け継いだのだろうか?


何にしても私はこの兄と過ごすこの時間がめちゃくちゃ楽しかった・・・

しかし楽しい時間はすぐ過ぎ去る。

次の日、私は兄を空港まで送って行った。

帰りの車の中ではほとんど喋らなかった。

そして最後の別れ際に兄は私に向け言った


「俺らももう歳やからもう会われへんかもしれんけど頑張れや」

「そうやな・・・」

「なんかあったらいつでも電話してこい、金やったらいくらでも出したる!分かったか!」

「はは!そやな!なんかあったら電話するわ」

「ほんまやぞ!」

「うん・・」


そう言えばこの会話は以前にも喋った様な気がした・・・

私が故郷を離れた時だ。

今と寸分狂いなくこの会話をした覚えがある・・・

しかし私はこの兄の呼びかけに答える事が無くホームレスになってしまった・・・

ただ・・・一回だけホームレスの時、一回だけ電話をしたことがあった。

直ぐに切れてしまった電話だったが私はその電話のおかげで、当時生きる希望も何もなかった私に生きる勇気を与えてくれた。

兄はその時の事を覚えているだろうか・・・

でも私はそのことは聞かなかった。

たぶん・・・いや、絶対覚えているだろう。

なぜなら兄は私の事を誰よりも大好きだからだ。

なぜなら私が兄の事が大好きだからだ。

兄の言うとおり、今後もう兄とは会えないかもしれない・・・

今回会えたのも兄がこちらに来る用事があったからだ。

それが無ければこの再会は無かっただろう。

実は兄はこうも言っていた・・・


「沖縄へは招待はされたけど来ないでもよかってん・・」


今思うとこれは本当だったのかもしれない。

「OIST 沖縄科学技術大学院大学」へ来ることは大事な事かもしれないが本当は私に会うために来たのかもしれない。


私は今後、また何か想像を絶する試練が待ち受けているかも知れない。

しかしその時も私は一人でその試練と戦っていることだろう。

なぜ一人で戦うかと言うと


兄も一人で戦っているからだ・・・・















名前

内容

はいむるぶし 記入なしさん そのとーり!南群星が見えるところにおります。しかしもう飽きたかな!^^ (14/06/14 18:18)
はいむるぶし サイコロさん な〜つがす〜ぎ〜かぜあざみ〜・・・・にっぽんのなつ!きんちょうのなつ!冷たい麦茶と蝉の声・・・・・!^^ (14/06/14 18:16)
はいむるぶし まりあっち 男ってそんなものではないでしょうか?この辺も私は昭和レトロ?^^ (14/06/14 18:12)
記入なし はいむるぶしさん 沖縄何ですね。名称の由来は沖縄地方の方言で、「南群星」(はい・むる・ぶし)から。南群星とは、南十字星を中心とした南に群れている星を意味する。良いお名前ですね^^/ (14/06/13 15:56)
サイコロ きょうだいって、なんなのかぁなぁ〜とお〜いとお〜いなつの日が、おもいおこされてしまったよぉ・・・それぞれ夏休み帳を仕上げるように・・・でも、子どものときとちがって、だれひとりとして同じ課題ではないんだね〜 (14/06/09 23:18)
まりあ ちょ、ちょ〜!! (^_^;) 一部の読者サマは、はいちゃんのお兄様?を特定できそうやんか〜;;こんなこと書いた時点でウチも特定されてる?w 今度の13日の金曜日には、老齢・障害年金の支給が下がるさかい気ぃつけや〜!と、お兄様?によろしゅうね〜(^O^)/ (14/06/09 22:26)
まりあ なんか、はいちゃん…、かわいそうやわ。。。。お兄様も。。。。兄弟ってそんなもんやろか〜。あいたい、電話したい思ても、どうしようもなくなるで〜。動けて、頭もしっかり(認知症になる前に)しているうちにもっと家族交流しときー!(今日は関西弁でかいてみた^^) (14/06/09 22:25)


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