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遺作イズムゲッチュー日記Author:稲木恵次 ( Profile ) skypeID:inagi_jyunji |
■ 2011/09/01 (木) 政治 |
小選挙区制度と政党要件、政党交付金による
小政党排除は日本の政治に汚点 1994年に成立した政治改革4法によって、日本の選挙制度と政党のあり方が大きく変えられた。衆議院選挙は中選挙区制から小選挙区制度になり、政党には政党要件が設けられ、要件を満たさない政党はその他政治団体と分類され、公職選挙法上の政党と大きく区別されることになった。それは、2大政党制を画策した小沢ビジョンに基づくものだった。 小選挙区制度の導入を前提とした政治改革の理由はお金と政治との癒着を断ち切るためと説明され、当時この改革に党決定に反発して青票を投じた岡崎ひろみ衆議院議員や旭堂小南陵参議院議員には、守旧派のレッテルが貼られ、抗議のファックスが一日中送られた。 政治改革四法案が成立して15年が経過した今日、2大政党化が推し進められ、少数者の意見が政治に反映できない仕組みをつくることになってしまった。その最も大きな要因は、小選挙区制度だが、その中味、問題点については、他の講師にゆだねるとして、私からは政党要件をもたない新社会党のような小政党がいかに国政選挙で不利な状態にあるのかをお話をしたい。細目については、学習会で資料に基づいてお話しするつもりだが、ここでは大まかな問題だけ指摘しておきたい。 政党要件とは何か・・・政党とその他政治団体での差別 公職選挙法上の政党要件は「政治団体のうち、所属する国会議員(衆議院議員又は参議院議員)を5人以上有するものであるか、近い国政選挙で全国を通して2%以上の得票(選挙区・比例区いずれか)得たもの」となっている。例えば、新社会党のように地方議員しか抱えていない政党で、全国選挙でも2%の支持を得ていない政党はその他政治団体となる。ところが、選挙をたたかう上で「政党要件をもった政党」と「その他政治団体」では、立候補をはじめ選挙活動で大変な差別を受けることになる。まず、政党以外の立候補者は衆議院選挙で比例区との重複立候補ができない、また政党は比例区に一人からでも候補を立てられるが政治団体は衆議院選挙では定数の10分の2以上、参議院選挙では(選挙区を含めて)10人以上候補者を立てなければならない。例えば衆議院選挙の近畿ブロックでは定数が29人だから6人以上を立候補させなければ比例区選挙をたたかえないことになる。供託金は比例区では600万円だから3600万円を集めなければ比例区選挙への立候補ができないのである。政党要件をもつ政党ならば一人、供託金600万円で立候補できるのにである。 また、前回の参議院選挙で、9条ネットが比例区に立候補したが、比例区が9人で選挙区が原さんということで、600万円×9人プラス300万円×1人で、立候補するだけで5700万円を供託し、得票が供託金没収点に遠く及ばなかったことで、比例区分はすべて没収され、供託金没収点を越えた原さんの300万円だけが返ってきたのである。これでは、9条ネットが再び立候補することは、到底ありえないことがわかっていただけるのではないか。 また、選挙期間中でも、政党要件のない政治団体なり無所属候補は政見放送に出演することはできないし、選挙はがきの実質枚数や公営掲示板以外での広報ポスターの添付や個人ビラ以外の宣伝チラシなどの配布ができないなど、選挙運動上も大変な差別を受けている。また、献金についても政党要件をもつ政党は企業(法人)の政治献金は受け取れるがその他政治団体は個人からの献金しか受け取れない。 したがつて、新社会党などその他政治団体は、政党要件を持った政党とは法律上圧倒的に不利な条件で選挙運動を強いられることになっている。 政党交付金とは・・・ここでも政党要件での差別 政党交付金とは、政党活動を助成する目的で国庫から交付される資金である。政党助成法のもとづいて、政党要件を満たした政党などに交付される。企業・団体から政治献金を制限する代償として制度化されたものだ。この成立に一番熱心であったのは小沢現民主党幹事長である。その小沢がそれ以後も西松建設などから大変な献金を集めていたのだからまさに、政党交付金は「盗人に追い銭」である。 しかも、その額は半端ではない。助成金の総額は国民一人当たり250円と決められ、直近の国勢調査で判明した人口を元に計算される。現在は約390億円である。例えば、2009年度では自民党は140億円、民主党は130億円で、2010年度では民主党は今回の大勝でされに額が大きく伸びることになる。 また、交付金の使途については制限してはならないと定められ、その使い道は、タクシー代はもちろん高級料亭での飲み食い、テレビCMなどにも及んでいる。選挙前の自民党や民主党のテレビコマーシャルはこの政党交付金が使われているのである。私は新社会党に所属しているが、私の税金が対立政党のコマーシャルに使われていると思うとガマンならないのである。この政党助成金の使途についてはその権限を政党の幹事長や党首が握ることになり、政党内民主主義にも大きな影響を与えることになる。自民党の小泉首相の反対者への刺客や小沢幹事長の独裁などもこの政党交付金が大きな力を与えている。 最後に 政治改革四法はまさに国政の2大政党化である。今回の衆議院選挙で大勝した民主党は衆議院の比例区の定数を削減することをほのめかしているが、これが行われれば社民や共産も国会議席を失う可能性があり、政党要件を一度失えば、回復は非常に難しいのである。まさに、世界中の多くの民主主義者が命をかけて戦いとった普通選挙制度が、日本で危機を向かえているといっても過言ではない。 |
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