U_sanのいいんですよ。それで。

　かつて嫁が川で流されそうになったことがある。思い返せばいまだに
恐ろしい。僕にとって大切な人、間一髪で自力脱出してくれたが。

　くそ暑い夏だったと思う。僕と嫁は川で釣りをしていた。さんさんと
照る太陽を憎らしくも思ったが、釣れたオイカワの美しい姿を見れば、
それはどうでもよかった。

　僕のお腹がギュルギュルいいはいじめる。やばい、トイレがない。嫁
を残し家に向かうことに。突然の大粒の雨。ずぶぬれになりながら自転
車を漕ぐ。ぎりぎりセーフでトイレにかけこんだ。

　嫁が濡れているだろうとあわてて引き返す。が、想像以上にびしょ濡
れの嫁と道端で出くわす。急激に水位が上昇したという。ふだんの水位
は50ｃｍにも満たないのに、僕がトイレにいった１０分弱の間に150ｃｍ
以上に水位が上がった。流れも凄まじい。川から抜け出そうと階段を目
指そうとしたが、濁流に阻まれ断念。土管を利用して壁をよじ登ったと
いう。

　よくぞ抜け出したとは思ったが、急な状況変化に心がついていかなかっ
た。嫁が生きていてくれたことは本当によかったが、肝心なときにそば
にいてやれなかったことを悔やんだ。でも一番は、川が恐ろしかった。

　あれから何年にもなるが、僕は肝心なところで嫁のそばについてあげ
ていない。今回の九州北部豪雨でそれを思い返した。何事もなければ、
ついつい見ようとしなくなる。もっと嫁のことを気にかけないとと反省
した。

　朝倉や日田を豪雨が襲った最中、僕は山間に分け入っていた。雨は降っ
ていたが、それほど気にしていなかった。ただ、極力川には近づかない、
近づいたとしてもすぐに逃げられるように意識していた。雨が強まった
ので退散したが、その後ニュースで豪雨の模様を知った。

　僕はやりたいことがあるとなにがなんでもやらないと気がおさまらない
性質で、台風だろうが、雷雨だろうが、豪雨だろうが躊躇せず行動して
しまう。命も惜しいけど、それ以上に嫁に心配をかけすぎたと反省するの
である。