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ヒモと呼ばないで

9年ぶりに帰ってきました。誰か助けて。

 ■ 2004/01/21 (水) 本音


とうとう一人に、引越のことを話してしまった。
そうなると、今の仕事を辞めることになるということも。

彼の反応はことのほか肯定的だった。

「だけど、せっかく縁あってこうして一緒に働けると思ったのに、寂しくなるなぁ」なんて、ウソでも嬉しい言葉までもらう。
さらに「俺も何度も他の面接に行ってるし。」「ホントの話、本当に俺がこの仕事をいいと思っていたら、引き留めるよ。」とも。

何より、彼が自分の本音を話してくれたのが嬉しかった。
少しホッとする。

もういつ責任者に「実は…」と切り出してもいいな。
あとはタイミングか…。
でも、こうなると少し勿体ない気もするな。
っていうか、ここまで覚えたことは全部無駄になるわけか。
やれやれ。

思い入れなんて正直全くないけど、親切に何度も教えてくれた人には本当に悪いと思う。
っていうか、それを言ったら警備の先輩は全員か。
今日のBさんはともかく、他の人は「辞める」って言ったら、やっぱり気を悪くするかな。

俺のせいで、みんなが迷惑するのは、やっぱり嫌だな。
って言っても、辞めるときは辞めるんだけどさ。


帰宅後、その事を妻にも話す。

そんな俺の気持ちは「そんなことよりさぁ」という言葉であっという間に横に置かれ、引越後、今使っている家具のうちどれををそのまま使うのか、処分するのか、使うなら、どう使うのかを一方的にまくし立てる。

俺が、その話に辟易とし、視点を変えようと思い「結局お義母さんには月いくら払う必要があるのか」と聞くと、彼女曰く、

「あたしとお義母さんで適当に決めるから、余計なこと考えなくていい」、とのこと。

今までの話し合いの中で生じた熱が一気に冷める。
そして、それはすぐ氷点に達し、次ぎに、ドライアイスのような攻撃的な冷たさが、自分の気持ちの中に生まれてくるのが分かる。

…それがお前の本音か。

それじゃ、俺の本音も聞くか。
…。

やめよう。

俺は争いが嫌いだ。
争いはどんなものでも避けたい。
にもかかわらず、こうしてその一歩手前まで行ってしまったのは、その場の空気を読み違えた俺が悪い。

闘争心というようなものを完全に失っている今の俺では、それがどんな争いであれ、最終的には確実に負けて、一方的にダメージを負うに決まっている。

だからどんなやり方でもいいから、争い事は絶対避けなければ。

苦手なことを自分から招くような輩は、バカそのものだ。
サムライを気取ったチンピラのような真似だけは絶対にすまい。

今の俺は真っ当な労働を厭わない立派な百姓の慈悲によって生かされている負け犬の落ち武者じゃないか。(そして、その百姓だって剣を持たせればそこらの野武士より「使う」こともある。全く素晴らしい。)
信念も自信もなく、闘う勇気もないくせに、無闇に粋がることだけはすまい。

身の程をわきまえろ。



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