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ヒモと呼ばないで9年ぶりに帰ってきました。誰か助けて。 |
■ 2013/05/06 (月) お前が怖い |
子供の日で、且つ、公休。
家族と過ごすには、最高の組み合わせ。 濃い目の緑茶に豆大福なレベル。 ありがたい。 でも、いい休みにはならなかった。 それどころか、救命ボート以前のライフジャケット、いや最後の頼み≒泳力の衰退を突き付けられたような一日になってしまった。 家族で川越に行った。 汗ばむ日差しに、歩くには少し遠かったが、川越城の本丸御殿まで歩いた。 修繕工事で長いこと閉館してたので、やっと家族みんなで見られる、と思うと足取りも軽かった。 特に何が起きたというわけじゃない。 それどころか、子供と一緒に博物館やお目当てのお城の本丸内を見て回ったり、菓子屋横丁のまんじゅうや団子、いもソフトクリームなどを笑いながら食べたのも、久しぶりで楽しかった。 でも、わかってしまった。 予想以上に深い、妻との溝。 そして、これがもう埋まることはない、ということも。 彼女とはもう何年もセックスレスで、会話も仕事の予定と子供のことだけと言っても過言ではない関係だ。 それでも、子供の成長を大事に思うという共通点ひとつでつながってた。 でも、それすらもうとっくに崩れてたんだ。 恐らくこの散策で子供たちの心に残ったことは、菓子屋横丁の中国人がやってる露店で人形を買ってもらったこと、それだけだろう。 俺はそれが悲しい。 でも、妻は満足なんだ。 行きの電車、西武の特急レッドアローから秩父の山並みが見えた。 「ほら、きれいだよ、みんな見てみな!」 瞬間、頭を突かれたバブルヘッド人形のように反応し、競争で探す子供。 しかし、妻の甲高い声が、閉店後のシャッターになされたスプレーの悪戯書きのように、その美しい風景画の額縁のような窓にカーテンを引く。 「あ、あんなとこにイオンある!ほらほら、前行ったお店、こんなとこにもあるよ!」 そこから、席を回して向い合せに座る俺以外の全員が、額縁の中を駅が3,4個ほど流れて消えて行く間、その大型スーパーで以前何を買ったか食べたかの記憶力クイズ大会で盛り上がる。 ・・・。 こうしているうち、レッドアローは終点本川越に着いてしまった。 博物館では、幸運にも学芸員の解説ツアーの時間とタイミングが合ってた。 ここぞとばかりに、娘の手を引く。 洗練された空気を纏う学芸員さんの、立て板に水な解説。 俺を含めて皆、知的好奇心を満たされて、緩んだ頬に目だけ光っている。 「この人すごいね! 人に説明するからには、まず自分が十分に理解しなくちゃならないよ。 この人は、中世から近世の川越のことは全部わかっ・・・・」 話を遮り、突然、俺の肩越しに娘を盗もうとする手が伸びる。 振り返り様、どこかでそれを期待していたかのように娘はその手に従い、過剰に頷く頭の波乗りから降り、一人素潜りを始めてしまう。 見れば、学芸員さんのオーラ射程外で、明らかにさっきより楽しそうにママの腕にもたれてる。 後で聞けば、妻のスマホに入ってたママ友からのメールについて話してたそうだ。 それもゲームの話で。 ・・・。 毎朝、まさに朝飯前に10分くらいだが、音読と100マス計算をやらせてる。 小5の1学期のうちに(本当は小4のうちにだった)漢字検定5級(小学校全課程)を取ることを目標に、読み書きの練習をさせて、それと並行して週1回は図書館に行って、好きな本を借りさせ、そのあらすじと感想を書かせてる。 夜勤や24時間勤務明けの時も、できる限り子供たちの都合に合わせ、ナショナルジオグラフィックやディスカバリーチャンネルのDVDを一緒に見たり、博物館に連れて行ったりした。 休みには近所の川や公園で、「人が作れないもの」を一緒にじっくり見て、それについて話した。 木、葉、石、雲、月、虫・・・運に恵まれた時には、虹なんかも。 それに、何よりお互いの顔。 いつも子供は楽しそうだった。 「博物館行くか?」「公園行こうか?」と聞けば、間髪入れずに「うん!」と答えてた。 質問もたくさんされた。 中には答えられないものも。 その時は、辞典で、ネットで一緒に調べた。 その時の彼らは、学芸員の話を聞き、大きく頷く波の一部を確実に構成していた。 緩んだ頬に、目だけキラキラ光ってた。 自然の中や、本の中に面だって、白いものは沢山ある。 それが少しづつでも、伝わってると思ってた。 でも、ちがった。 我慢してたんだ。 勉強は面白くないもの。 でも、我慢すれば「楽しいこと」がご褒美される。 それは、ママがくれる。 ファーストフード、ディズニーランド、おばあちゃんち・・・。 主に「テレビで紹介されたものを、見に行く、買いに行く」こと。 食事中にはテレビを消す。 俺がいるときは。 でも、わかった。 多分、俺がいないときはついている。 以前俺が食事を作ってた時(主に主夫時代)、魚柄人之助さんに倣い「味、経済性、健康」のバランスを考えて作ってた。 妻に同じことは求めないまでも、子供は成長すれば、親と食事する機会も減り、それにつれて外食も増えるから、家で食べるときは、保存料だの着色料だののないものを食べさせようと話して、彼女も同意した。 これも同じ。 俺の話は素通りだったんだ。 いくら言っても、最近は食事前1時間くらいに菓子を与える。 それも、見るからに着色料の塊みたいな、どこで見つけてきたんだ的な菓子。 「だってこれを食べたがってるんだから、しょうがないじゃん!」 で、案の定、夕ごはん半分で、「もうたべられない」 毎回のように、これを繰り返してる。 俺はアルバイトの警備員もまともに勤まらないダメ男だ。 年収も300万に届かない。 足りない分は、妻が働いてくれたし、働いていない今は妻の貯金を切り崩したりしてなんとか凌いでる。 これからの見通しも暗い、というか・・・無い。 妻に何か言える資格はない。 言うまでもなく格差社会の負け組だ。 でも、金をかけなくてもできることがあると思ってた。 負け惜しみと思われても、そう思ってた。 ただ、黄色く時に白く、大きく時に遠くに輝く月を、どうしても「きれいだ」と感じてしまう気持ち。 今自分で削った鰹節の香りを愛でながら食す味噌汁を「美味い」と思う味覚。 100年も前の人が感じた憧憬、恐怖、焦燥、愛情・・・を読書により、たった今、自らの中に見出す感受性。 負け組でも養える、はずだと。 その子供として生まれても、それを身に着ける権利があるだろう、とも。 でも、失敗した。 「ディズニーランドに連れてってくれる」なら「しょうがない」から、「我慢」して「やるしかない」ことになり下がってしまったようだ。 それでも、これから塾にでも行き、受験を目標に頑張れば、いい学校に入れるかもしれない。 それは大事なことだろう。 そうなればいいとも思う。 でもそれ以前に、神々しい山々が視界にあっても、ショッピングセンターがその前にあれば、それを無き者にしてしまう今の子供たち。 俺はそれが悲しい。 でも、お前は満足なんだよな。 俺は、お前がそれで満足だってこと、それが悲しい。 子供がテレビに吸い込まれていく姿を、微笑ましく眺めてる、お前が怖い。 そして、それを止められない俺自身が改めて、情けない。 |
名前 内容
B級主夫 まりあ様、コメントありがとうございます。テレビに吸い込まれている時、ほとんどママと一緒です。テレビを点けてないときの話題がまたしてもテレビについてなのが怖いんです。 (13/05/09 20:40)
B級主夫 応援者様、コメントありがとうございます。結婚とは、なんでしょうかね。よくわかりませんが、いいこともたくさんあるのは確かだと思います。 (13/05/09 20:35) B級主夫 タヌキっポン様、コメントありがとうございます。商業主義も否定はしていません。それに憑りつかれてしまうのを避けてやりたいんです。 (13/05/09 17:54) B級主夫 めとろん様、コメントありがとうございます。その「理解できるとき」が来たとき、広く、深く、知的に・・・と色々ありますが、なにより「楽観的な」モノの見方をしてほしいです。 (13/05/09 17:50) まりあ 親以上に子どもが一番気を使って大変な感じがしました。お父さんのいるとき、お母さんのいると時と子どもなりに頑張って気持ちを使い分けて。。。。子どももテレビに吸い込まれている時間がないと、心がしんどくなるのだと思います(日記の趣旨とは違うコメントでごめんなさいm(__)m)。 (13/05/07 22:43) 応援者 同じ価値観、同じ方向を見ていない夫婦は大変ですよね、でも子供に対する責任があるから簡単に離婚できないし、結婚とはいったいなんなのだろう。 (13/05/07 18:18) タヌキっぽん ん〜〜〜、難しい状況に進んでいますね。ナチュラリストな暮しが良いと思っても世は商業主義に満ちて誘惑ばかり。脱線しますが、こんな話が在ります。定年退職したら夫は郊外で畑付きの家で菜園などに振れて暮したい。一方で妻は繁華街やカルチャー施設、病院に近い交通至便な街中に住みたい。意見が合わないそうです。とにかく、また明日。 (13/05/06 23:19) めとろん 私もB級主夫さんと同じような感性だわ。女性は貴方の奥さんみたいな人のほうが多いですよ。女の集団が苦手な主な理由がそれだもの。奥様がいないときの子供と自分だけの時間を大切にして、これから積み重ねていくといいと思います。子供はこれから長いこと気づかず母親の価値観で成長していくとは思いますが、そのうち父あやと母親の人格を切り離して個々に見れて、理解できるときが来ると思うんです。 (13/05/06 23:19) |
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