ヒモと呼ばないで

結構、笑った。
みんなも爆笑してた。

こんなにジョークのセンスのいい講師は初めてだ。
かと言って、おちゃらけてるだけというわけでもない。
しっかり、押さえる所は押さえた講義だった。

何しろ、自慢話がなかった。
大抵「元○○官様」が出てきて、全く関係ない「俺の手柄」話を29回／8hくらいするもんだけど。
経験談と自慢話は似ているようで、全然違うことをよく知ってる人だった。

体調もそんなに良くないし、出る前は覚悟してたけど、お蔭で淡々と時間が流れてくれた。

「場末感炸裂」だとか「ザ・昭和の雑居ビル」だとか言ったけど、少なくとも今日の研修内容は、「(株)平成システム21」だったな。

・・・。

2003年12月の日記と読み比べてみた。
・・・初日、ボロボロだったな。

あの時に比べりゃ、まだいいか。

何しろ、近いのがいい。
前は朝5時起きで、里山慣れした心と体を引き摺るように電車に揺られたのは、それだけで苦しかった。

おまけに、明日は休み。
で、1日行ったら、3連休。
連日5時起きのあの時とはかなり違う。

仕事自体も、さすがに大体の流れは読めるし。

あの頃に比べりゃ、恵まれてるよ。

・・・。

ただし。

あの時と同じこと、9年経った今もまだやってるなんてことは置いといて。
あの時にすがるように書き綴った日記に、今またこうして救われてるなんてことは、置いといて。

研修も講師も進化してた。
地理的、時間的な環境も随分楽になった。

変わらないのは、俺だけ。

・・・いや、「結構、笑った」なんて、変わったのかも。
もう無抵抗なんだ、きっと。
抵抗し、闘う気概を失くしただけなんだ。

その上で、こんな風に他人事みたいな比較をして。

こんな俺こそ場末感炸裂じゃねえか。
あと3日、研修続けても、顔におできなんかもう出来ないだろう。

あきらめと余裕は似ているようで、全然違うこと、よくわかってるつもりだったんだけどな。

また見てる。
夜行観覧車・・・もう9回か。

録っといてよかったな。
第1回から録画してある。

きっと、苦しんでる人がいるのを見たいんだ。
不幸な人を。
出来れば俺よりもそうであって欲しいと思ってるんだ。

それがフィクションでも構わない。
いや、フィクションだからもっといいんだ。
こんなことで慰みを得てる小さい、情けない、醜い自分に対して、「架空の話」「事実じゃない」「所詮、虚構」って逃げられるから。

・・・。

「OUT/桐野夏生」も同じ。

BOOKOFFでその背表紙を見た瞬間、前にTVドラマ化された時に感じた、あの絶望感がフラッシュバックした。

蜜の味。

俺は、夫・・・じゃなかった、妻を殺してない。
俺は、知り合いの夫の死体をバラバラになんかしてない。

・・・。

俺は父親を殺してない。
息子に殺されてもいない。

・・・。

俺の日常は、あんな陰惨な空気に支配されていない。
俺の家族は崩壊なんかしていない。

・・・。

まだ。
していない。

・・・。

「夜行観覧車」は次回最終回。
「OUT」は上下巻のうち、上をもうじき読み終える。

録画は消さない。
本はきっと繰り返し読む。

こんな甘い蜜、捨ててたまるか。

UP遅れました。以下は3／15(金)の日記です

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昨日で就活終了。

ってことは、今日は「仕事決まったし」っていうセリフが、無条件にアウトコース低めにビシビシ決まる日だ。
神様っていう審判も、多少外れててもそこはストライクに取ってくれるに違いない。

仕事も決まり、前の退職手続きもない、子供の学校や習い事の都合もない、その他煩雑な付き合いも・・・ないない。
おまけに夢も希望もない、ってのがオチってのが痛いところだけど。

・・・。

で、惰眠を貪る。
そこらにあるものを食う。
ダラダラ時間だけが過ぎていく。

・・・。

で、不安になる。

いつものヤツだ。
常連の店で黙ってても出てくるお通しみたいな俺のパターン。

・・・。

この日記に帰ってきて、こんな風に自分の事を一日の終わりに見直すようになったのも、何かのキッカケだ。
・・・っていうか、キッカケにしよう。

黙って出てくるお通しだけじゃ、お腹いっぱいにならないだろ。
たまには自分で注文してみるんだよ。

・・・。

・・・思い浮かばない。

・・・。

そうだ、日記がキッカケなら、その日記から探してみよう。

・・・。
・・・ない、よ。

・・・いや、この際、無理やりでも、でっち上げでも、何かあげよう。

昨日、俺はこんなこと書いてた。

「幸い、俺に殺人の前科などない。
今はこれでけでもラッキーだと思うことにしよう。
これも持ち駒の一つだと思うことにしよう」

「持ち駒」、か。
・・・これって増やせないかな、今から。

46歳の今から。
警備のバイトの今から。

・・・。

ダメだ、思い浮かばない。

・・・さっき100円ショップで買った干し芋あったな。

・・・って、これこそ「いつものお通し」じゃねえか。
・・・。

寝よ。
思い浮かばないよ。

おやすみなさい。

・・・。

畜生。
眠れないよ。

朝8時を少し過ぎた。
今日は暖かくなりそうだけど、まだこの時間は炬燵がありがたい。

小学生の上二人を送り出し、昨日より少し薄い挽き立て粉茶入りの緑茶を啜りながら、録画したNHKの「いつか陽の当たる場所で」を見ている。

前科(それも殺人)のある主人公の再起の話。
飯島直子さんの明るさの「痛さ」が眩しい。
あんな状況であんな明るさを持てる人、なんて現実には難しいとは思うけど。
・・・いや、いそうで(いて欲しくて)いないから、みんな見るんだよな。

・・・。

粉茶を作るのに、より細かいそれにしようとすると、自分で回すセラミック臼のハンドルがよく滑って外れ、左手の甲をよく切るが、今日はそれすらもスムースだった。

「仕事も決まったし」
自分に言い訳してごまかす歴40余年の身として、今日一日をグダグダ過ごすのに、こんな鉄板な言い訳はない。
そんな余裕が、文字通り些末な日常茶飯事まで浸透して、サクサクと自分を動かしているようだ。

・・・って言いながらも、そんな上手く行くわきゃねえよな、ってどこか感じてる。

何故って、俺のそういう安堵した姿を粉砕することを趣味にして10余年の妻が、すぐ後ろで黙りこくってるからだ。
なんなんだ、その殺気。
どこの剣豪なんだよ、お前は。

「今日、ホワイトデーだよ。あの子たちにお返ししないでいいの」

・・・はいはい、忘れちゃいませんよ。
します、します。
ああ、しますよ、しますとも。

それ以上の言葉を遮るため、そんな思いとは裏腹な明るい声で応えた。
「そうだったね、あとで買いにいくよ」

末っ子と妻が幼稚園に行くのを見送り、さっきよりもっと濃い粉茶入りの緑茶を3杯飲んだ後、俺も外出した。

・・・・ってどこ行くか。
だけど2千円しかよこさねえし・・・でもこれ考えたら、二人分だろ。
絶対足りないじゃん。
下は幼稚園だっていったって、ちょっと可愛いパッケージのチョコだのクッキーだのだって、今時千円じゃ買えねえだろ。
上のお姉ちゃんのに至っては、言うまでもないし。

地元の文房具屋さんを探すも、これというもの見当たらず。
食べ物系は駅前にも、お菓子屋にも、コンビニにもあったから、後ででいいや。
だけど、それだけじゃなくて・・・女の子だし、なんか気の利いた“カワイイ”ものも添えてあげたい。

で、何となく電車に乗り、何となく池袋で降りて、何となく歩いて、何となく無印行って、それからLoft行って・・・。
とりあえず色々買った。

お姉ちゃんは今四葉のクローバーものが気に入ってるみたいだから、そのスタンプと緑のインク。
それに同じく、四葉のクローバーのデコシール(？)・・・あと、そうだ。
帰ったら、もう読み終えた「電車の中で読む詩集(うろ覚え)」もあげよう。ブックカバーもきれいなのあるから、それ付けて。
もう4年生だし、読めるよな。
詩集だから、読むっていうか、感じてくれればいいんだし。

末っ子には、桜のシール。
・・・だけ。
だから、2千円じゃ足りねえってんだよ。
4月から「さくら組」さんだから、本当はあと一つか二つ「桜もの」買ってあげたかったけど。

最寄駅について、行きに見ておいた桜のパッケージのクッキーを2つ買う。
ひとつ、1050円。
今時でも千円で買えたな。
足が出た分は、俺のなけなしの小銭で補ったけど。
500円玉の価値って、こういう時感じるよな。

・・・。

「バレンタインデーのとき、チョコありがとうね」
なんかこんなこと言うの、娘でもちょっと気恥ずかしい。

果たして彼女たちの反応は、すこぶる良好。
よかった。
単純にうれしい。

4歳の末っ子は、まだ拙い字で「パパ、ありがとう」って書いてわざわざ手渡してくれた。
すかさず裏に日付とメモを書いて、ファイル。

こんな宝物がこのクリアファイルには幾つもある。
こんな男でも、こんなすごい宝物が貯まる。
ただ子供がいるだけで、どんどん増えていく。

だけど。

「子供は5歳までに一生分の親孝行を終える」って言う。
そして、親は子供が自立するまでその眩しい、温かい、幸せな体験の後払いを続けていく。

・・・できんのか。
失業し、やっとのことでバイトの警備員にありついてほっとしてる46歳に。
娘にホワイトデーのプレゼント買うのに、あと数枚の千円札すら用意できない父親に。

もう人生の持ち駒を使い果たしつつある、この俺に。

・・・。

「パパ、ありがとう」

20年後にもこう言ってもらえるのか。
正直、わからない。

せめて今は、あの飯島直子さん演じる役柄を見習おう。
痛いけど、それ以上に俺には眩しい、あの明るさを。

幸い、俺に殺人の前科などない。
今はこれでけでもラッキーだと思うことにしよう。
これも持ち駒の一つだと思うことにしよう。

UP遅れました。以下は3/13(水)の日記です。


ミスった。

昨日スマホ、ポケットに入れたまんまだったから、気づかなかった。
電話来てたよ。

17：58に。
見たことない番号だけど・・・まず、間違いないだろう。

今、もう6：25だ。
いや・・・まだ6：25か。

・・・。

あああああ、どうするか・・・。
・・・こんな時間だから、今、連絡は出来ないよな・・・うむ。

待てよ。面接後のスケジュールの書類もらったな・・・確かあそこに・・・。

あった！
「不採用の場合、こちらから連絡はしない」とある・・・って事は、連絡来たんだから、採用決定じゃん！

ヨッシャアアアアアアア！・・・と、待てよ・・・何か書いてある。
「連絡はこちらの番号からします」ってあるけど・・・番号微妙に違うじゃん。

なんだそれ。
でも、ちょっと末尾が違うだけだぞ。
この会社からじゃないのかな。

・・・。

うーーーーむ、どうするか・・・。
・・・ちょっと引いて、自分の状況を見てみよう。

・・・。

まず、最悪を考えて、それを避けることに集中しよう。
・・・えーーーっと。
まずは、面接した両社の採用の可能性を一度に潰すことだけは避けなければならない、よな・・・うむ。

で、今、既に1社からは採用報告受けてて、もう1社は、採用の可能性は高いけど、まだ確定してない、と・・うむ、そうだ。

ってことはだ、今まずすべきは、前者の可能性を今の段階で潰さないこと、ことだよな・・・うむ・・・そうだそうだ。

ってことは、とりあえず、今は新任研修の初日に間に合うように準備をしなくちゃダメだ。

・・・よし、落ち着いた。
シャワー浴びよ。

あ、石鹸新しくなってる。
なんかツイテるかも。

・・・だけど、やっぱ8時過ぎに電話しちゃ早いかな・・・。

電車に乗る前なら、そのタイミング。
最寄駅に着く時間なら、8：30だ。

・・・やっぱ早いかな。
・・・まぁ、いいよな。
まぁ早いっちゃ早いが、「実は、今日これから他社の研修・・はまずいか・・・面接なんですけど、もし昨日の電話が採用の連絡なら、今この場で断わりますから」って言えば。

うん。
それでいいや。
それでいこう。

・・・。

駅近くで脇道に入り、思い切って電話した。
特に慌てた様子もなく、向こうから伝言があると切り出される。

「面接時に話したのと、別の現場も考えてもらえませんか」

聞けば、これが悪くない。
面接時に説明された短所の、少なくとも大きいそれが一つ、クリアされてる。
失くしたくない最大の長所は維持されたままだ。

その場で、今日中に再度面接してもらう約束を取り付け、体感速度で競歩世界記録を破るスピードで踵を返す。

家に戻り、一気に妻に顛末を捲し立てて(俺はこんなのばっかしだな)、最近買った手回しセラミック臼で挽いた粉茶を入れた、超濃いお茶を1杯。

落ち着いた所で、早速研修初日の採用済みの会社に、採用辞退の電話を・・・流石にし辛い。

・・・。やっぱ、怒るよな。
出社初日の当日のその朝、だもんな。
っていうか、研修開始30分前じゃん。
・・・そりゃ、怒るわ。
・・しょうがない、怒られよう。
怒られて当然だ。


「あ、もしもし」
「はい、株式会社○○です」
「あ、おはようございます・・・採用いただいて・・・えーと、入社予定の○○○○ですが」
「あ、○○さんですね」
「はい・・・大変申し訳ありませんが・・・採用を辞退させて頂きたいんですが」
「・・・えーーーっと・・辞退・・・ですね」
「はい」
「あーーーっと、わかりました」
「大変申し訳ありません。では失礼いたします。本当に申し訳ありません」


・・・わかるの、早っ。
「えーーーっと」「あーーーっと」って。
引き止めどころか、驚きもされなかった。
こんなもんか。
やっぱりあの面接官・・・最初から期待されてなかったってことで、まぁ助かったな。

で、2時間後に再度面接。
果たして紹介された現場は、学校。
日勤の2交代制。
早番は超早いが、その分終わるのも早い。
昼過ぎでおしまい。
遅番はその昼過ぎから夜割と遅い時間まで。
日曜は夕方まで。

「朝起きて、夜寝る」、人としての前に動物としてのリズムを守れる生活は、何年ぶりだろう。
早番なら夕飯、遅番なら朝食を家族と一緒に摂れる。

他の条件もまぁ色々あるが、決めた。
その場で、採用も決まり。

その後のスケジュールは追って連絡、とのこと。

・・・。

今回の就活、終了。

・・・さすがに疲れた。
なんか甘いものでも買って、妻と末っ子が帰る前に一人で食おう。

疲れなくても食ってるけど。

・・・ああ、疲れたよ。

やれやれ。

UP遅れました。これは3／12(火)の日記です。

採用された会社からの電話は、11時直前にきた。
・・・10時じゃなかったのかよ、眠い目擦りながら待ってるんだからさ。
いくら立場が上だからって、約束の時間くらい守れよな。

・・・で、明日9時から来い、と。
それも、書類、全部耳揃えて持って来い、と。

言うまでもなく、警備なんか本当に誰でもなれるけど、ただ、最近数年の間に前科があったり、麻薬だののをやってたり、保証人がいなかったりしたらダメなんだ。
それは他の(真っ当な)業界でもそうだろうけど、警備業はそれを証明する書類を自分で用意することになってるから面倒なんだ。
・・・まぁ、信用ないってことなんだね。

で、早速重い腰上げて行こうとしたけど、財布に小銭しかない。
慌てて、妻に電話。
・・・出ない・・・仕事中か・・・。
メールする。

返事が来たのは30分後。
仕方ないから午前中の出発は諦めて、午後一で書類集めに奔走することにした。

「登記されていないことの証明」は九段の法務局。
「身分証明書」は本籍のある某区役所。
「住民票」は・・・忘れそうだったから、妻に帰りにでも取ってきてもらうように頼んだ。

地下鉄乗り換え、往復で何回したんだ。
・・・って、その前に、何回この書類取りに来てんだ、俺は。

最初にここに日記上げた時期が、まさに最初に(まともな)警備会社に入ったときだったから、9年前、か。
でえーっと・・・5、6回目か・・・うむ。
6回もこんなとこにこんなことしにきてんのか、俺は。

・・・。

もう一つの会社からの合否の連絡はまだだ。
昨日の今日じゃ、そりゃ無理だろうとは思うけど、来てほしかった。

来てりゃこんな、偉そうな面接したり、時間も守らない会社なんか即PASSだ。

・・・。

まだ心が決まらない。
ここに行くのか、俺？って感じ。

条件はほんの少しこっちがいいけど・・・なぁ

・・・。

面接行ってきた。

都内某所。
オフィスは「ザ・昭和の雑居ビル」の3階。
1階は場末感炸裂の飲食店街で、どこから上がっていいのかちょっと迷ったくらい。

“付けりゃあいいんだろ、付けりゃあ”感丸出しなエレベーターを降りると、即左前が入口ドア。
で、入ると、また目の前にイスとテーブル。
それも一昔前の喫茶店みたいな背凭れ付の木製の丸い椅子にこれもこげ茶の丸テーブルだ。
で、即、面接開始。
そう、まさにそのドアのど真ん前で面接が始まったわけだ。

ところが、この佇まいとは裏腹に、面接官は若く清潔感に溢れ、実に真摯に気持ちよく面接してくれた。
勤務地も隣駅から数分だし、日勤だし、土日休みだし、利点も多い。
マイナスは、通常の休日を入れると、年間半分しか働けず、その間、多現場に行かされるってこと。
それでも、強制的に休まされるわけじゃなく余所で働けるから、給料もそれほど変わらない。

一言で言えば、好感触。

何しろ、約ひと月≒インターン途中で辞めた前職とその前会社、どちらに前職確認したらいいか、俺に聞いたくらいだから、ここは俺のいい面を拾って評価する「加算」面接だろう。
(この前の会社とは偉い違いだ)

思わず笑みをこぼしながら帰途に着き、妻に顛末を一気に捲し立ててる、まさにその時。

俺の型落ちSHARPのスマホ、震えまくり。
いつもの12倍くらいブルブルしてたと思う。

・・・前に面接行った会社からだ。

「あ、○○さん、どうも・・・今いいですか？」
「はい」
「○○さんの気が変わってなければ、採用ってことなんだけど」
「は？あ、はい・・・ええ」
「で、と・・・ちょっと待って・・・えーっと、明日の10時に出られるようにしといて。その時今後のスケジュール伝えるから」
「出られるっていうと、そちらの本社にですか？」
「いやいや、電話に」
「あ、電話に・・・はい」
「多分、水木土のどれかから研修はいるから」
「あ、新任研修ですか」
「そう」
「・・・わかりました」
「じゃ、よろしく・・・明日言うから」
「はい、よろしくお願いします・・・ありがとうございました」


・・・採用？。
あれだけボロクソ言っといて、採るんだ。

って、俺もよろしくお願いしますって・・・何言ってんだ。
・・・まぁいいや・・・明日10時までの心決めて、もし今日の会社にするなら、その時はっきり断わりゃいいんだよな。

・・・。

それにしても。

「会社変わっちゃ、辞めの繰り返しか」
「配置変換が問題だっていうなら、警備の仕事に就くってことが問題だろ、あんたの場合」

そこまで言っておいて、採用かい。

・・・。

背後に妙な熱さを感じて振り返る。
なんなんだ、その殺気。
どこの剣豪なんだよ、お前は。

見れば、妻が安堵感を全身の毛穴から吹き出しながら、笑ってる。
「前の会社、採用？行ってね」

ここで実質、今日の夫婦の話はおしまいだったわけだが。

「・・・でも、日勤だから何より体調にいいし、土日休みだから、子供たちとも一緒の時間もやっと持てるし、家から歩いていける現場だぞ・・・こんないい条件他にないよ」

「でも、そこって18日でしょ、合否わかるの。ここ断わって、もしそこも落ちたらどうすんの？」

「いや、多分大丈夫」

「多分って？」

「こんな好感触で落ちたことないよ」

「・・・」

・・・。

自分で言ってて、俺も根拠ない話だと思う。
前職辞めてすぐ、前勤めてた会社に面接してもらった時も、採用されるもんだって思い込んでたからな。
面接だって「これは前と同じですから」「あ、これも分かりますよね」って感じで、淡々と進んで、後は俺の近況と世間話でいい感じだった。
それが逢えなく不採用で、今こうなってるわけだし。


それに、ここは採用でも、3ヶ月の試用期間中は社会保険にも入れないから、自分で国保と年金の手続きしなくちゃならないし。
さっさとしないと、子供たちの毎月の歯医者や急病にも事欠くんだよな。

・・・。

夜勤のマンション警備・・・やったことあるじゃん。
2か所もさ・・・それもその2か所、掛け持ちで。
それも24時間と夜勤の。
今度は夜勤だけだぞ・・・楽じゃん。

それにその日勤・土日休みの会社もさ。
土日に臨時警備入れてくんじゃねえのか？
「じゃ、悪いけど行って」、な感じで。
有無を言わさずな感じで。
夜勤、遠距離関係なく。
今まで、色々な会社で散々見てきただろ。

閑散期の待機も、どこ行かされるか分かったもんじゃねえぞ。
最悪、交通誘導もありうるし。

・・・。

明日、10時。
お電話お待ちしてます。

頑張ります。
どうぞ宜しくお願いします。

・・・はい。

また思い出しちゃった。
あの「すいません」。

前社辞めて数日後、2月半ば頃の話だけど。

前社での愚痴を散々聞いてくれた同僚と会った。
彼は前の前の前の会社の同僚で、そこを紹介してくれた人の同僚でもある。
つまり、私と彼と口利きしてくれた人は、その前々前の会社の同僚同志って関係。
同じ防災センターで2年以上一緒に働いた。
ちなみに「楽しく」働いた記憶しかない。

で、その彼に告白されちった。
「愛の」じゃないよ。
当たり前か。

「前にここの事話したら、○○さん『そのどこが大変なんですか？』って聞いたじゃないですか？実はあれにムカついてたんですよ。
だから、ここがキツイの分かった上で紹介したんですよ。」

で、「すいません」だと。

・・・。

おまけに
「△△さん(実際に口利きしてくれた人)も、最初は『若いうちはキツイとこで揉まれた方がいいんだ』とかって、□□(現場名)に回すよう●●(上役)に進言したみたいですよ」

・・・。

はぁ？
何それ？
俺は嵌められたってこと？
復讐されたってわけ？

うむ・・・確かにその時、その現場については色々聞いたかも。
でもただ、「どんな現場なんですか？」って聞いただけだろ？

他意なんて無いよ、そのまんまだよ。
書き言葉じゃない、そこで会って、顔合わせて言ったんだから、俺がただそこの現場の状況を知りたくて聞いたってことくらいわかるじゃん。

それをわざわざ「どんな現場なんですか？≒そのどこが大変なんですか？≒そんなの全然大した事ねえじゃねえじゃん」って取ったのか？！

で、逆恨んで、俺に声を掛けて、同じ環境に引っ張って、そこに放り込んで、案の定苦しんで凹んでたのを散々聞いて、密かに喜んでたのか？

自分はちゃっかり楽な現場に異動になった後で。

・・・。

怒りすら起きなかった。

脱力。
ただただ脱力。

・・・。

そのときのあっけらかんとした「すいません」が頭から離れない。
また強烈に思い出しちゃったよ。

・・・。

その時からの脱力が戻らない。

また思い出しちゃったよ。

・・・。

明日、面接なのに。

第一印象が大事だってアドバイスも貰えたんだけど、こんな脱力野郎がいい印象なわけねえよな。

・・・。

ああ、明日面接か。
日勤のみの施設警備で、家からも近い、社会保険完備・・・なんてそうないぞ。

・・・。

ああ、明日面接。
明日、面接なのにな。

ただいま。
っても、誰も覚えてるわけないか。

9年ぶりだから。

その後は「MYPRESS」ってところでずっと同じタイトルで日記書いてたんだけど、そこが潰れてしまい、数年間の記録もパー。
もう無職じゃなかったし、まぁいいかなんて思ってたんだけど。

今回、再び無職になり、またこちらにやってきました。
どうぞみなさんお見知りおきを。

・・・さて、と。
どこから話そうか。

無職からやっとのことでスーパーの警備に就き、途中1年くらい他業種に勤務したが、後は警備会社を渡り歩き、9年過ごした。
既婚で、子供3人。
以前ここに出入りしてた時は一人だったが、9年の間に増えた。
・・・まぁ、その話はまた今度。

・・・とにかく今は将棋でいう「詰み」状態。
途方に暮れてる。
ため息と、舌打ちと・・・あ、息子が帰ってきた。

耳鼻科に行ったんだが、もう保険証がない。
妻がATMで1万円札を下して連れて行ってくれたのに、「この時期に来ても混んでる。2時間半は待ってもらう」とか言われて、仕方なく帰ってきたそうだ。

今、スーパーの天丼をレンジで温めてる。
490円？！・・・高い。
ついこの前までこんな値段何とも思わなかったのに。

・・・続けます。

前の会社の勤務は楽だった。
今思うとまるでお花畑だ。

そんなに大きくない施設警備。
そもそも仕事そのものが少ないし、閉館するともう寝るだけ。
夜勤時の仮眠ですら5時間以上取れた。
問題を起こすホームレスもいたが、そんなものどこにでもいる。
平和に2年勤めてきた。
そこの隊長が3月で辞めるらしかったから、多分普通にしてたら、年齢的にも俺が新隊長になってた可能性は高い。

じゃ、なぜそこを辞めたのか。
もっといい所があったからに決まってる。

そこの会社の親会社。
更に、前の同僚の口利きで優先して採用するということだったから、それに乗ったんだ。

大きい会社だし、何より給料がよくなるって。
所謂「コネ」で採用もほぼ間違いない、となれば・・行くでしょ、フツー。

で、行ったよ。
行ったさ、ああ、行くともさ。

・・・それがまさかあんな現場とは。

とある商業施設なんだけど、これが俺の能力を大幅に超えてた。
施設全体が巨大で、関係者用の通路なんか迷路だ。
誇張じゃない。
後で聞いた話では、ロッカーから防災センターまで一人で行けずに、1日4回も人に付き添ってもらったひともいたそうだ。

って、人をダシにして話してるが、閉口したのは俺も同じ。
辞めるその日までキョロキョロしてたよ。
辞めた今でもトラウマになってる。
もう新しい現場覚えられないんじゃないかって。

その他にも、回された複数の現場をゴッチャにして言うけど・・・。
電波時計を買うよう強要されるほど時間に五月蠅い開店業務。

17時から休憩と仮眠・・・って眠れないよ、そんな時間に。
さらに、着替える場所もないから、息を止めるように衣擦れの音にまで気を遣い、既に寝てる別の施設の人の上のベッドにそっと忍び込んで、誇張ではなく、天井まで50cmの寝床で横になる・・・。

どういうわけか、明けや休みの日までちゃんと眠れなくなってしまいました。
じゃ、いつ寝てるんだって？
だから、勤務中眠いんですよ、ずっと。

で、(寝てないけど)起きた途端に、閉店業務だ、終業点検だ、清算業務だをぶっ続け。
最後の現場では3時間連続で(俺の個人的な体感スピードでは)競歩くらいの速度で歩くというか、走り回り。
やっと受付で休めると思いきや、何故か座れない。

さらに、暴力まである。
みんなこんな中でキリキリしてるからか、そこまでしなくても、妙に高圧的なヤツ多かった。

何か聞いても「俺、君がどこまで覚えたかなんか知らないから、教えられない」って訳の分からない理由で教えてもらえないこともしばしば。

で、インターン開けたら36時間勤務がすぐ待ってるから、ヨロシクって・・・。

なんと2回も異動させてもらっても、同じような条件の現場でした。
ってことは、この会社にはもう他に現場はないってことと理解しました。
それでまた異動させてくれなんて・・・言えないでしょ。

凹んで、凹みまくって、気が付いたら穴が開いてしまって、もう戻りませんでした。

「毎月辞める人が出てるって？そりゃそうだろ！」って、どこか「俺は間違ってねえ」的な「勝った感」すらありました。

本当の地獄はここからだとは気が付かずに。

・・・。

「あっそ。じゃ、辞めな。でも、もう来なくていいよ」
この会社から言われるのはともかく、これを業界全体から・・・いや、社会全体から言われちまったことに気が付かなかったんだ。

いつの間にか、持ち駒全部使い切ってたようです。

就活、面接開始してみたら、
「入っちゃ現場変わるの嫌で辞めた、の繰り返し？うちも同じだよ(だからお前いらね)」攻撃で秒殺ワールド満開。

これを2回連続被弾中。
さらにこのうちの最初は、前いた会社で。
電話した時は2年以上経過していたにもかかわらず、覚えててくれたし、感じもよかったんだが、結果は不採用。

今思えば、履歴書手書きじゃなかったのもよくなかった。
退職のゴタゴタで一度面接行けなくなって、再度ハローワーク経由でとなったのも悪かった。

でも、一番悪かったのは、前職を入ってひと月で辞めたことだろう。
これで履歴書の職歴が一気に4行増えて、すぐ辞めるヤツという印象が更に加速したんだから。
8回転職、うち警備が6社、それが最長3年半、後は全部1,2年で辞めてるんだから。

・・・自分で書いててもロクなもんじゃねえな。

で、もう警備業界にすら戻れないのか。
国家検定じゃないが、資格も二つあるんだが、焼け石に水か。

警備すらできない40代半ば男が、他になにすればいいんだろうか。

・・・。

どうもできないから、ここに戻ってきたんだ。

・・・。

とりあえず明日はまた面接。

ウンザリ顔な面接官の「うちも同じだよ(だからお前いらね)」攻撃を躱して採用させる技、誰か知りませんか？

・・・。

スティーブン・セガールでも無理そうだな。

職場に着いて、大きなため息と共に出入管理のため受付のイスに座り、シフト表を再確認する。

最近は慣れてきたので、もう見ないことの方が多いんだが、今日は見た。
理由はない。
何となくだ。
しかし、見てよかった。
そこに俺の給与明細が紛れ込んでいる。
明日、振り込みか。
忘れてたよ。

先月も出たが、それは〆の関係で一日分だけだったので、これが実質的初任給だ。


…というわけで、勤め始めて一月が経ち、とうとう給料を得ました。
残念ながら「主夫」に戻れる見込みも少ないと言わざるを得ないので、引っ越して、そこから通うことを前提に次の職を探すまでは、ここで働くことになる可能性が高いと思われます。
そうなると「無職.com」というサイトの特性上、もはや私はここには相応しくないと判断しました。
毎日働いている、その日記をUPしている現在でもすでに、不愉快に思われている方も恐らくおられるでしょうから。

というわけで、次の職探しに入るまでここに日記をUPすることはお休みします。

途中、記事を削除したときに温かい応援を下さった皆さん、また、掲示板や、ご自分の日記の文中にわざわざスペースを割いて数々のアドバイスや応援を書いて下さった方々、そして、こんな私を「ヒモと呼ばないで」いてくれた全ての皆さん、本当にありがとうございました。

一応こちらで継続して書かせて頂いています。
こちらは「無職」とは特に無関係なのでそのまま続けても問題ないようなので。
よかったら遊びに来て下さい。
http://www.mypress.jp/v2_writers/shufu/

皆さんが、無職／有職にかかわらず、本当に心から満足できる毎日を送れますように。
微力ながらお祈りしています。

追伸；管理人さん、お世話になりました。
　　　また無職になった時には、よろしくお願いします。

B級主夫。