爺放談

レンタルビデオ店を営んでいる友人が居ます。

多くの人達は大抵大手の直営やフランチャイズの大型店に足を運んでいるそんな中で、彼は今もこじんまりと個人店を経営し、現在２０年目を迎えました。

その彼がよく私に言うことは。


「○○さん！最近私のような個人店がどんどん減ってきているんだよ」

「やっぱり大手にはあらゆる面でかなわない！うちら個人店では大手の様なレンタル料はどうしても出せないんだよ・・・・」


ここで少し、あまり知られていないと思いますがレンタルビデオ店の大まかなしくみを説明したいと思います。

まず、一般映画やアダルトのソフトは同一タイトルでも２種類あることをご存知でしょうか？

一つは一般視聴用ソフト、もう一つはレンタル事業用ソフトがあります。

私の友人のお店や大手レンタル店はこのレンタル事業用ソフトを使用する義務が課せられています。

一般視聴用ソフトは今はコンビニなどでも購入できますが、この業務用は卸を通さないと購入できません。

この二つの違いはズバリ値段です！

ソフト一枚に対する値段の差は、一般視聴用はだいたい３０００円前後に対してレンタル事業用は１５０００円前後になります。

特に一般映画がこの値段でアダルトはそれに比べればかなり安く、それでもアダルトの一般視聴用に比べれば割高です。

単純に考えますと、一般映画の作品で元を取るためには一日レンタルが２５０円だとして６０回転して初めて利益になるのです。

この回転数はよっぽど話題性が有る作品でも１年以上かかる回転数なのだそうです。

しかしレンタル店は話題性が有る物だけを入れる訳にはいきません、それ以外のものも入れていかないとお客はすぐ離れて行くそうです。

ですから個人店では一般映画のレンタルではほとんど赤字経営だそうです。

ですから、個人で経営しているレンタル店が一般映画の作品よりも比較的値段の安いアダルトが中心になるのは必然的でこのジャンルをよく回転させることで一般映画の赤字をカバーするのです。

ここで一つ大きな疑問を持つ方も出てくるでしょう。

では大手はどの様にしているのでしょうか？

大手の大型レンタル店では一般映画の作品で同じタイトルが何十本と並べてあるお店もよく見かけます。

この説明だけではそれこそ大手の方が赤字だらけになります。

しかしそこはそれ大手の仕入れには個人店が出来ない仕組みがあります。

大手はこの業務用ソフトメーカーや大手卸と手を組み、ほとんど仕入れが只で仕入れることが出来ます。

そしてそのソフトのレンタル料を両者が折半しているのです。

では卸やメーカーの方が損なのでは？という疑問も出ますが実はそうでもないのです。

それはソフトの延滞にあります。

どのお店も延滞には頭を悩ませています、特に個人店ではそんな高額なソフトを延滞されてはたまった物ではないのです。

それが大手になればその数の量に比例して延滞する人も数多く出てくるのですが、その全てを回収するとなるとまた多くの経費が発生します。

しかしメーカーや卸はそんなことに関係なく、レンタル料も折半なら延滞金も折半なのです。

ですから延滞日数がかさむに連れ、その契約を結んでいる大手はその延滞料もメーカーや卸に支払わなければなりません。

これが大きいのです。

個人店でもこの契約をメーカーや卸と結べ、只で高価なソフトを何枚も仕入れることは可能です。

しかしその契約は、まずメーカーや卸が専用の事務用ソフトを導入することから始まります。

その事務用ソフトはリアルタイムで売り上げや延滞、仕入れたソフトのタイトル、本数、貸し出し数、客数、貸し出した時間・・・全てがメーカーや卸に分かるシステムのソフトです。

これを導入させられることにより店側の不正が出来なくなります

友人のお店でも延滞金が１００万を超える人達が何人も居ると聞きます。

そうなるとソフトのお金が高いと言っている事など些細なことになります、必然的にその回収能力が無ければこのような契約は結べるものでは有りません。

そういう意味で結果的にはその回収能力のある大手でなければ無理な契約となるのです。

ちなみに大手フランチャイズにもフランチャイズ料と上記の同様のことが要求されます。


一昔前の個人店は違法ですが一般視聴用のソフトをレンタルに回し、大手の値段に対抗するというところも多かったらしいのです。

しかし友人が言うには去年から著作権の問題が大変厳しくなり、そんな違法業務をしている個人レンタル店を見回るＧメンが日本全国を去年から見回っているらしく、摘発を受けるとその商品はもちろん全部没収され、著作権法違反によりメーカーに多額な損害賠償を支払わされます。

そんな多くの理由から去年から今年にかけて多くの個人レンタル店が店を閉めるということが多くなったようです。

そんな逆風吹きすさぶ中でも、私の友人のお店は２０年の歴史と固定客らのおかげで、苦しいながらも現在もお店を切り盛りしています。

友人は言います。

「うちのお店のような個人店でも大型店に負けないことがあるんだよ！」

「大型店はお客とのコミュニケーションがアルバイトを多く使っているのであまり取れない！」

「うちのようなお店は暇な時間が多い分、客と話す時間が多くてレンタルする気がなくてもうちに遊びに来る客も多く居るんだよ！」

「そんなお客さんを大事にすることでその客が他の客を連れてくることも多くあるんだ・・・・」

「やっぱり客商売は人との繋がりを大事にすること・・・・その点が大手には無理で私らはそこに付け入る隙があるんだ・・・・・・」


私はその友人が言った言葉は昔からある商売の基本で、しかし時勢とともに薄れて行っている事だとも思っていましたが・・・・・・


その友人のお店が続く限り、まだまだ日本も捨てた物ではないとも思うのでした。