Transparent lie

先週の話。

いつものように裏口から『おつかれっした〜』つって、俺がバイト上がろうとしたら
「吉川さん、ちょっと待って!!」って後ろから呼び止められて
振り返るとバイト先で一番カワイイ リサちゃんが
なんか思いつめた顔で走ってきて、

その剣幕に、やや動揺しながら
「何？」って言って立ち止まった俺を、潤んだ黒い大きな瞳で見つめて、俯いた。
一呼吸おいて、顔を上げ、彼女は言った
「吉川さんが・・・好きです・・・。」

時間が止まる。俺は、声が出せず、黙って馬鹿みたいに
彼女の赤いマフラーを　ただ、見ているしかできなかった。
10秒か…30秒か、その沈黙は　たいした時間じゃなかった。
でも、どんな時間より長く感じた。

しかしその時間を切り裂くように　突然、「バタン」と大きな音がした。
裏口の戸が開く音だった。


・・・・
その先には、二個上のレイコさんが立っていた。
レイコさんは俺たちを交互に見たあと、
泣き笑いのような表情と消え入るような声で「わたしも…吉川が好き」とつぶやいた。


すると、また「バタン」という音がして
最近入った高校生バイトのアミちゃんが「あたしが吉川さん好き」言い始めて
したら中国人のﾎｱﾝさんが「ワタシモ　ﾖｼｶﾜ　スキヨ」つって
またパートのおばちゃんが「おばちゃんもヨっくん好きよ〜〜」とか言って
さらに後輩の鈴本まで「オレも先輩がスキっすよ」って言いはじめて
チーフが真顔で咳払いした後、「…好きだぞ……吉川」って言われて
最後に店長に『ワシも君が好きじゃ〜』って言われたら

リサちゃん、レイコサン、アミちゃん、ﾎｱﾝさん、オバチャン、鈴本、チ−フに
合唱で

『　ど　う　ぞ、　ど　う　ぞ　。』

って言われて店長に譲られる夢を見た。　

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・初夢だった。　ＯＴＬ

（登場人物は全て仮名です。
　実際の人物とはまったく関係ありませんご了承ください。）