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爺放談


 ■ 2014/03/31 (月) 上海にて・・・A


私はチェックインを済ませ再び社長の車に乗り込んだ。


「とりあえず飯でも食うか」


社長のご贔屓の和食料亭へと張さんの運転する車は走りだした。


さ〜いよいよ私は上海の夜の街を繰り出したのだ。

行くまでの道中、私は窓から過ぎ行く店やビル、街並みなど隈なく観察をした。

そしてある事に気づく。

それはなんと日本語の多いことか。

確かに中国は漢字圏である、何となく意味は通じるがやはり日本の漢字とは少し違う、それが日本語に見え錯覚しているのかとも思ったが違う、明らかに日本語だ。

マスコミの情報などでは、尖閣諸島問題が過熱した時、日本関連のお店などが襲撃にあったと報じていた。

中には日本語で書かれた看板などが消されたり書き換えられたりと、日本の匂いを消すことに必死なことも報じられていた。

あれからそれほどの時間は経過していない、しかしどうだ、いま私は上海の中心地を移動している、もうどれだけ日本の匂いを嗅いだであろうか?

ここは本当に反日国なのか?

こうも考えてみた。

どの国々も、日本人観光客はドル箱観光客である、そこにおもねいた結果なのか?

確かにそれも多少はあるだろう。

しかしその理屈ならどの国々もこの上海並みに日本語が氾濫しているか?

私の経験上外国でここまで日本語が氾濫しているのは見たことが無い。

そして、私は後に更に思いもしない経験をすることになるがその話はまた後述することにする。


社長のお気に入りの料亭に車は滑り込んだ。


高層ビルの中に入っている中国人が経営している料亭だった。

高層ビルの3フロアがこのお店全体で、下の階は個室、中階は居酒屋風、上階は宴会用とフロア分けされており、全席満席だと500名以上収容できるというお店だ。

私等は下階の個室に案内され、それぞれの個室には3名のメイドと言うか係の者が世話をするようになっていた。

この係員は全て女性で全フロアに配置されており、とりわけ個室階には専属の係員が付く、見た目での判断だが多分ほとんどが二十代のように伺える娘達で、お世辞ではなくそのほとんどが綺麗で可愛くそしてよく気が付く。

これはこの店が従業員教育に力を注いでいる証であろう。


「いらっしゃいませ」


係員全員がいきなりの日本語だった。

更に驚くのはここで終わらない。

その後も全て流暢に日本語の嵐だ。

どう見ても20代そこそこの女の子が綺麗な日本語を日本人顔負けに喋ってくるのだ。


「綺麗な日本語ですね!どこで覚えたのですか?」

「私なんてまだまだです!日本語学校へ通ってます!」


・・・なんなのだこれは!反日国家だろ!どうなっているのだ?

ただよくよく考えてみると、ここはいくら中国人の経営者とはいえ日本食のお店、これだけ従業員教育が行き届いているお店なら有りえなくもない。

ただ想像以上に日本語が普通に使われていることと、外国初日からこれほど日本語が外国人から街並みから見聞き出来ていることに驚きを隠し得ないのだ。

そんな私の雰囲気を察してか張さんが語り始めた。

「ここに居る娘たちはほとんどが上海の生まれではありません」

「遠くの田舎から、更には北京からこちらに来ている娘達です」

「北京からもですか?」

「そうです。以前も現在も北京よりもここ上海の方がお金を稼げます」

「そうなんですか・・」

「それに貴方も知っていると思いますがスモッグの影響もあります」

「なるほど・・・」

「それともう一つ大きな理由があります」

「大きな理由?」

「中国では女性はどこの家庭も大切には扱われていません」

「は?」

「ま〜日本で言う男尊女卑です」

「・・・・」

「特に田舎に行けば行くほどこの傾向は強く、娘たちは家から追い出され、自分の食い扶持は自分でなんとかしろ!要するに口減らしに家から追い出されるのです」

「そうなんですか・・・」

「ですから中国の女性達は自立するのも早いし勉強熱心な娘が多い、それはそうでしょう、若いうちから一人で生きて行かなければならないのですからね」

「なるほど・・・」

「それに比べて男はダメなやつが多いのです」

「は〜」

「親たちから甘やかされて育っていますからね〜、社長の会社でも従業員はすべて女性です、他の会社でも下働きはすべて女性達です」

「そんな環境では中国の女性達は不満の声を上げないのですか?」

「中国ではそれが当たり前ですので女性達も違和感を持っておりません」

「そんなもんなのですか・・」

「中国では常に女性は男性の下に位置するのです、ですので田舎の農家でも働くのは女性で男は酒飲んで寝ています。それが当たり前なんです」

「男天国ですね!」


張さんの言うように、確かにその後も働いているのは女性ばかりだった。

さらに、そんな女性達のほとんどは戸籍がなく、そんな人たちの事を中国では「盲流」と呼び、彼女達は国家のあらゆる制度、補償、福祉の恩恵を受ける事が出来ない。

その背景には中国の「一人っ子政策」が生み出したもので、第一子に女性が生まれてしまった場合、どの家庭でもその子はほぼ捨てられる。

また、中国の田舎ではこの政策はほぼ形骸化しており、貧乏子だくさんの家庭が女の子の盲流に拍車をかける、そういう様な女性達が職を求め大都会に流れてくるのだ。

そんな彼女達が働く理由はもちろん生活の為なのは当たり前なのだが、それよりも一番欲しいのは「戸籍」なのだ。

中国ではこの戸籍もお金で買える。

戸籍の無い人間が家やマンションの様な不動産を購入した場合、住所の固定化という理由で戸籍が与えられる。

だから彼女達は生活よりも家やマンションの購入資金を必死に貯めるため必死に働く。

もちろんほとんどの女性達はこの願望は手に入れることはできない。

しかし彼女達は一縷の望みをかけて日々を一生懸命生きているのだ。

この料亭で働くほとんどの女性達も相当数この戸籍を手に入れるために額に汗して働いていると思うとつくづく日本は良い国だと実感するのであった。



つづく・・・








名前

内容

はいむるぶし サイコロさん お久しぶりです!またまた〜!お上手ですね!ほんとに〜!増長するぞ!^^ (14/04/08 22:02)
はいむるぶし 6次元の人さん ご期待に沿えるよう頑張ります! (14/04/08 22:01)
はいむるぶし 腐敗官僚さん おっしゃる通りです!ですので日本食のビジネスをさらに展開すために来たんです!億万長者への第一歩ですぞ (14/04/08 22:00)
はいむるぶし まりあっち え〜うそ〜まりあっちは私と一緒で北欧系のハーフですよね!^^ (14/04/08 21:58)
サイコロ お久しぶりです^相変わらずおもしろい展開には舌をまきます^文才がありますよね〜 (14/04/04 22:11)
6次元の人 勉強になります。次回も期待してます。 (14/04/01 07:32)
腐敗官僚 料亭という事は、日本料理を出す飲食店に招待された訳ですよね… 生鮮魚介類や生肉など加熱処理しない食文化は、本来は中国にはないので、寄生虫をはじめとする感染症が怖いです。 だからこそ、(食の安全を求めて)日本から食材を求めているのです。 (14/04/01 00:23)
まりあ ワタシ、日本人よ〜。国籍もニッポン人ネ^^ デも‥日本語苦手よ〜^^; 次回に期待しています^^♪ (14/03/31 23:01)


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