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ヒモと呼ばないで

9年ぶりに帰ってきました。誰か助けて。

 ■ 2003/12/29 (月) 離岸流/慣れ


Cさん「はい、これ会社から届いてたよ。」
俺  「…何ですかこれは。」
Cさん「何って、見ればわかるでしょう。」

渡されたのは「健康保険証」と「給与明細書」。
給与明細は、〆の関係で1日分だけだが。

こういうモノを突きつけられると、波打ち際からいきなり足の届かない沖に流されたような不安を感じる。
そこから「もう戻れないよ」って決められてしまった感じがする。
それは、働きだして「一番恐れていたこと」に、今の仕事で言えば「確認の印鑑」を押されたという感じがするからだ。

そして、その「一番恐れていたこと」とは「慣れ」だ。

一日にチェックする人数は300人以上になるので、取引先関係者のことはまだよく分からないし、仮に困った人がいたとしても、実際に顔を合わせている時間など微々たるものだから、そう問題にはならない。
問題はペアを組む人達のことだが、果たして、俺の他に3人いるメンバーの中に、誰一人としてウマが合わない人はいなかった。
っていうか、みんないい感じの人ばかりだ。
今時珍しいんじゃないだろうか、こんな人達…とすら思える。

そんな人達に支えられながら、今日初めて、午後勤務の2つの役割分担のうちの1つを、全日ほぼ一人でやらされた。
どれもこれも閉店時間を基準に細かく時間が決められているので、目が回る忙しさだ。
いきなりだったし、面食らったが、それでもとりあえず何とかなった。

…慣れてきたんだ。

人に恵まれ、仕事に問題がなければ、職場そのものが恐くなくなる。
それはいいことだ。
っていうか、嬉しいことだ。
俺だって、そんなにひねくれてはいないさ。

しかし、だ。

俺はすでに自分の天職というようなものが何かを知ってしまっている。
「知ってる」というより「決めた」と言うべきだろうか。

ここでどんなに仕事に慣れようと、先輩・同僚がいい人でも、ここでの仕事は俺の天職にはならない。
俺の天職とは、「下るだけ」の生活で、「上を向く」のに不可欠な「谷戸」であり「広場」である「主夫」という場所だ。
そこでの景色に充分満足し、っていうか、それが気に入ったから、ここに居を構えることにしたんだ。
ここにテント設営を済ませ、もう既に3年も過ごしてきた上で「天職」だと思っているんだ。
それなのに、ここ3ヶ月かそこらで何だか訳もわからないまま急にここを追いやられて、また獣道を歩く羽目になっている。

そして、その道は「上り」。
それが証拠に、俺は今「上を向いて」いられる姿勢で、「キツさ」を感じながら歩いている。
少なくとも、足下に気を付けて「転ばないように」歩いてはいない。
その「キツサ」も、ひょとしたら「心地よい」と言ってもいいのかもしれない。

そして、これこそが「慣れ」を生む最大の要素だ。
「転ばないように気を付けて・下る」と「上を向いて・上る」を比べた時、その上り坂がよほど険しくないなら、多くは後者を選んでしまうんじゃないだろうか。

俺もそうだった、今までは。

でも、もう分かっちゃったんだよ。
一見、価値ある頂上のように思えても、もう俺の人生に訪れる「上り」は「よりキツイ」下りの為の下準備しかないってことを。

そういう「上り」を散々繰り返してきて、その揚げ句にやっと腰を落ち着ける「谷戸」「広場」を見つけたんだ。

このまま、「慣れ」で獣道を上り続けても、今はともかく、そのうち「振り返りながら」上ることになるに違いない。

いくら「下り」より転びにくいとはいえ、そんな歩き方じゃ、転ぶ確率は高くなるだろう。
っていうか、そのうち転ぶよ。

今度もう一度、この「広場」にたどり着くのは、そうやって転んで、いわば「転落」して来たとき、ということになるんだろうか。

そんなの、転ぶだけ無駄じゃないか。
っていうか、「またか」って感じだよ。

転んだら、痛いんだ。
もう散々痛めつけられてきたんだ、もう嫌だよ。
痛いだけで済むとも限らないんだし。

このままここにいさせてくれればいいんだ。

お前は登山家と一緒になったんじゃないんだよ。
里山ハイカーと一緒になったんだよ。
Walkerだよ、Runnerじゃないんだよ。

そんなに俺が転ぶところみたいのか。

もし、そうだって言うなら、誰かの言うように「他の」広場に移るしかないのかな。
「他の」谷戸に。

天職を真っ当出来るなら、それもいいのかな。

よくわからん。


【PS】
今日一緒に行くと言ってくれる人がいたら、ひょっとしたら本当に今日で仕事やめてたかも。
エビオスじょーさんがもう5、600km近くにお住みでなくとも、出勤前にあの日記を見ていたら、自分の生活は多分変わってました。









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