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ゴール前直線。

Author:めとろん ( Profile )

 ■ 2008/12/07 (日) 残して逝くこと




いよいよマラソン大会のシーズンが始まりました。


次男は伴走「有り」でも「なし」でも参加します。
有る方がペース配分してもらえるので成績が良くなりますが、ない方がのびのび走れるしどっちも楽しいです。
シーズン皮切りとなる今日の大会は、地元高校野球部の伴走が有ります。
伴走者は現地決定、うちの子はいつも彼らの中で一番俊足の子が選ばれます。


担当者「一番足の速い子は誰?」
皆が一斉に一人の子を指差す、これは毎年の光景です。
担当者「じゃあキミこの子の伴走ね。J君(うちの子)、今日はZ君と走りますよ」
Z君「あっ!!J君!!」
なんとZ君はうちの子が10年前に通っていた習字の先生の子供さんでした。
この子の母親と私とは13,4年前に知り合いました。
次男が通う幼稚園の保護者同士で、私がやっと見つけた唯一のともだち、私はこの人が大好きでした。
無口で穏やかで向上心の有る人だった。
彼女は1人っ子のZ君を残してこの世を去りました。がんでした。


書道に情熱を傾けた10〜20代を過ごしながら、やっとの事で子供を授かってからは専業主婦となっていた彼女は
書道のよさを子供に伝えて行きたいと願っており、私も心から応援していました。
一方彼女は人生を通して背負って居るものも有りました。
彼女は今まで、これらの話を第3者にしたことはなかった様です。
初めて人に話す、と言っていました。
彼女はついに習字教室を実現させたわけですが、その頃から少しずつ病が忍び寄ります。
彼女は疲れやすくなっていました。


がんと分かった彼女は、最初の頃、残していく子供さんの身を大層案じていました。
また大きな問題を成長した子供と話し合う心積もりだったのに、それが出来なくなることを悩んでいました。
でも彼女は以前より入信していた神の力でその悩みを克服しました。
「Zは立派に自分で解決していける、私は何も心配していない」
という様になりました。
私も本当にそう思いました。
実際に語らう事が出来なくなったとしても、きっと彼は心の中の母親と対話して乗り越えていけると思いました。


彼女は精神力で書道教室を続けていくわけですが、そこで外野からひとつの問題が起こりました。
私が子供を書道教室に通わせている事が、彼女の負担になって寿命を縮めているという彼女の自称親友達の声でした。
この人達は地元の幼馴染達です。私は結婚してからこの土地に移ってきたよそ者です。
幼馴染達が言うのには、自分達の子もストレスを感じている、彼女は遠慮してるんだから察して辞めろというものでした。


私はこの人達に、これより以前に、小学校の渡り廊下に柵が出来たという事実だけで
「J君のためだけに税金を遣うなんて税金泥棒」
と言い掛りを付けられた経験がありました(もちろん事実無根)
この人達のお子さんは間違いなくうちの子の良いともだちですが
母親たちは
「うちの子が人が良いために、良い様に世話させられている」
と言っており、私は立場上
「申し訳有りません、いつもお世話になっています」
「ありがとうございます」
と平身低頭していたわけです。


Z君の母親はうちの子の書道に未来を感じてくれていました。転進爛漫な作品に
「ほら見てよ〜みつをさん見たいやな〜」
と笑ってくれていた。
それでも遠慮かも知れない
「まだ来ていいのかな」
私は何度も確認しました。彼女は
「ほんとにしんどい日は休ませてもらってる。出来なければ出来ないっていうから安心して」
と言ってくれました。
でももちろん私は少しずつ遠慮していった事は言うまでもありません。
ただ、当然ですが幼馴染達は、彼女と私の関係も、このやり取りも全く知らないのです。


とうとう彼女は入院するわけですが
お見舞いに行こうとしても、彼女の取り巻きが
「アンタのようなよそ者を会わせるとストレスが掛かるから行かないで」
と病院を教えてくれません。
「ご主人に聞いたり、子供に聞いたりしないで。面会の人選は私達がします」
と言う。
「それは彼女の意思ですか」
「そんなわけない、彼女はいいよ〜というに決まっている。だからこそ私達のところで止めないと」
「誰がどれだけ親しいか、どれだけの話が出来ているかまで分からないのじゃないですか?」
「私達は幼い頃からの親友です。昨日今日の貴女と一緒にされたくない」


そんなわけで、入院後一度も会うことなく彼女は亡くなりました。


私は長年自問自答していました。
本当は彼女はうちの子と私が迷惑だったのか。
病気の進行を早めるほど負担だったのか。
実際は彼女は私に会いたくなかったから会えなかったのか・・・・
もちろん、彼女のご主人からは毎年丁寧な年賀状は来ていましたが、わからない、分からなかったです。


「あっ!J君!!」
こう小さく叫んでくれたZ君。彼女と同じ控えめで温和な彼。
懐かしい嬉しそうな顔をしてくれました。
「お元気ですか」
「はい!」
「大きくなられましたね、立派になられて・・・じゃあ今日は宜しくお願いします」
「はい!!J君行こう!!」
満面の笑顔で一緒に走るZ君。
人は残念な事に必ず死ぬけれど、時には彼女のように大切な宝を置いていくようなことにもなるけれど。
今晩はお父さんと伴走の話をしてくれる事でしょう。






名前

内容

めとろん 新世界探検隊さんも書道家ですか。書道は生活の一部ですか。私は字が下手で従って書道の心には無知です。うちの子の右上がりで止め、で終わる字を味がある、もっと自由に書かせてみたい、この先どうなるか楽しみと言っておられました。私は皆みたいに達筆になってもらいたいからノーマルに書いて欲しかったのですが(笑)彼女は疲労と痛みと戦いながらも最後まで書道を愛していました。 (08/12/09 08:49)
めとろん 今宵限りさんありがとうございます。結婚前からのともだちのお葬式2日後に結婚後のお友達の子供さんのZ君に会ったのは、偶然なんでしょうが私にとっては・・・私側が心の中を話せる人はこの2人だけでしたから。「今宵限り」といわずまたレスください。日記は日々の身辺、心情整理のために書いています。読者に年下男性を期待してはいませんので(笑)どうぞ宜しくお願いします。 (08/12/09 08:38)
新世界探検隊 自分も書道習うてますねんけど、とくに楷書はどっと疲れが出る。けど、書道の先生つーのは、うちの先生もそやけど、往々にして子供好きやからね。そこから逆にエネルギー充填してはったんではないかと推測。 (08/12/09 00:23)
今宵限り めとろんさん、お互いの深い思いが穏かに伝わって来る文章だね。ちっとも重くなんかないよ。重い文章というのは、受け入れ難い内容の事。人生を振り返る年齢の私には、全てが素直に受取れるな。まあ、めとろんさんの好きな年下男性にも、理解出来る人はいるでしょう^^ (08/12/09 00:21)
にやーごとミネヤ 長、ダル、どーでもいいwホームレスっちにネタ提供してやれよ♪ (08/12/08 21:47)
めとろん あおねこさん。3日連続重くなってます。 (08/12/07 23:41)
めとろん *さん。内容がどうでもいいならレスしなきゃいいのに。 (08/12/07 23:40)
あおねこ 重い・・・ (08/12/07 23:38)
 Z君の母親にも、お子さんの良い友達の母親にも、心からのお世話になりました、ありがとうございます。これだけでいいんですよ。あとはどうでもいいことです。 (08/12/07 23:22)
めとろん ネタかっ!違うかっ♪違うよ〜だ^^ (08/12/07 23:12)


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