「非正社員」脱却進まず
企業の採用抑制で増え続ける一方だったフリーターの数が一転、景気回復にともなう採用の増加で大幅に減ってきた。フリーター増加を社会不安の増大ととらえ調査を進めてきた総務省では、年内にも調査開始以来初の二百万人割れの可能性もあると指摘する。ただ、フリーター減少の一方で契約・派遣社員数が増えているという現実もあり、企業には一段の正社員の雇用拡大を求める声が高まりそうだ。
厚生労働省の定義によるフリーターは、十五−三十四歳の男女(女性は既婚者を除く)で、アルバイトやパートで働くか(学生、家事手伝いを除く)無職でも働く意思のある人を指す。厚労省では、バブル崩壊による企業の人件費圧縮で「平成四年に百万人に達し、その後十年間で百万人増えた」と推計している。
総務省はこうしたフリーター増加が、社会保険料収入の低下や国の成長力低減につながることを懸念。労働力調査の一環として十四年に調査を開始したところ、十四年の二百八万人から十五年に二百十七万人にまで増え、十六年もほぼ横ばいの二百十四万人だった。
しかし、十七年は景気の先行きに強気な見方が広がったことに加え、企業が団塊世代の大量退職を控えて積極採用に転じたことで雇用環境が大きく改善、十七年のフリーター数は前年比十三万人減の二百一万人と、二百万人割れに「あと一歩」(総務省)に迫った。
ただ、フリーターそのものは減っているものの、契約社員や派遣社員など非正社員数はフリーターの減少を上回る水準で増加している。
フリーターを除く非正社員数は十七年には百五十九万人で、三年間で四十四万人増。企業によっては、フリーターではなくなっても、派遣社員や契約社員という非正社員の立場から脱却できない従業員も多い。
厚労省では、講習会や職場見学などの就職支援対策や試験雇用奨励金拡大など、企業に正社員枠の拡大を求める対策を強化しているが、「景気変動に柔軟に対応できる派遣や契約を求める傾向はまだまだ根強い」(幹部)のが実情。
大和総研の牧野潤一シニア・エコノミストも「企業はコスト圧縮の姿勢を崩しておらず、給与水準が正社員の約六割という派遣や契約社員で対応している」と指摘。長期雇用が前提の正社員は増やしにくいと分析している。
契約社員や派遣社員の増加は「根本的な社会不安の解消にはつながらない」(厚労省幹部)という指摘もあるため、厚労省では、就業支援強化の一方で、日本経団連や日本商工会議所に対し、正社員枠の拡大を求めていく。
(産経新聞) - 4月14日2時30分更新
投稿者 : 記入なし 日時 : 06/04/22 10:38