ヘッドセットを着けた日本人の若者が、海を隔てた日本の客に話しかけている。
その声とキーボードを叩く音しか聞こえない。中国・大連。政府が「ハイテク区」に
指定した地区の一角にライブドアグループのコールセンターがある。04年、現地に進出した。
働くのは同社の「中国語が学べるインターンシップ制度」に応募した約80人。堀江貴文社長が
ブログ「社長日記」で「マーケットが確実に拡大する中国でキャリアを積むことには意義が
あると思いますよ!」と紹介すると、説明会の申し込みは1時間で50件に上った。
時給は20元(約288円)。大連の大卒初任給の2倍にあたる。同社は当初、日本語のできる
中国人の採用を検討したが、片言では顧客が満足しない。低賃金の日本人を連れてくることで
コストを40パーセント削減できた。海外で日本の最低賃金法は適用されない。
記者(28)より一つ年上の五十嵐洋彰さん(29)は大連に来て1年になる。仕事は早朝、
日中の2交代。社宅は28階建てマンションで、家賃は半分が自己負担だ。週3回の中国語
レッスンは会社持ち。物価が安いから生活には困らないが、日本食レストランは高いから行かない。
「確かな生活を捨ててきた。でも行けば何か変わると思った」。契約は1年ごとの更新で
最長5年。契約期間の途中で辞めると、日本からの渡航費やビザの取得経費を返さなければ
ならない。五十嵐さんはもう1年いて中国語をマスターしたいが、どこまで上達できるか
不安も感じる。将来の仕事はまだ考えられない。グループの社員になれるのはほんの一握りだ。
同様のコールセンターを運営するマスターピースは03年に進出した。まず時給10元で
募集したところ120人もの応募があった。加藤舞子さん(26)は昨年2月から働いている。
時給は20元。前は営業事務をしていたが「毎日の単調な繰り返しがいやになった」という。
閉塞感の漂う日本。その隙を突くように成長企業が若者を引き寄せる。記者は加藤さんに
「使い捨てになるとは思いませんか」と尋ねた。「はい。それでもいいんです」(抜粋)
no.10 記入なし (06/03/22 04:28)