放蕩騎士の徒然語り。

（門を開け　時代遅れの鎧と羽飾り付きの兜の騎士はうんざりした様子で広間に座り込む。もう従僕もいない　友人たちはある者は仕官し　ある者は死に　ある者は首を吊り　ある者は屋敷から出て来なくなった。だがほとんどの者は仕官し働いている）
「ああ本当に」
「取り残されているのだ。私は」
「皆はすっかり一角の人物になった。市政にかかわり領主の覚えめでたき者　大きな開発計画にかかわった者　騎士団の中枢になった者　精神を病んだ数多の人々を助けた者......そうとも皆立派にやっている」
「私だけだ。あの友人一同の中でこんな有様なのは。同じ境遇の新しい友人相手にそれをこぼしているのだから世話はない」

「随分とここの様相も変わったがこうして私は戻ってきた。何故？決まっている、承認欲求だ」
「彼方の方では碌に口も開かないが元来こうして話すのが好きで呪詛を吐くのも好きだ。しかして声を出して話すのは苦手だ。であればこうして文をしたためるしかあるまい」

「かくて放浪騎士はまた呪詛を　言葉を　泣き言を記す」

法的にはいつこの仕事を辞めても問題ないにも関わらず　私はこの仕事を続けている。
……悪い事に　この仕事が好きなわけではないのだ。

私の事情など　世界はどうだって構わないと感じてるだろうけれど
書かずにはいられない。

ご機嫌よう友よ。また此処へと帰ってきたぞ。
というのもな　どうもこう４年も居りながら今の職場が大層堪えるのだ。

毎朝逃げたいと思いながら　早く終われと呪いながら日々を過ごすのが心身に良いわけもない。
　　　で　あらばよ

此処へ由無し事を吐き出して　日々の慰めとしたら　まぁ少しは楽になるかとおもったのだ。

左様にして　また此処へと書いていくぞ。　どの道私は書く事しかできぬのだ。

友の祖父殿が旅立たれた。

我が友の悲しみは大変なもので あの娘御泣いてばかりだ。

涙は収まっても　その悲しみは癒えぬと見える。　こんな時こそ友としてなにか出来たらとお思うが　我が空虚な言葉には　何ほどの力もない。

友は悲しみ　世界は膿み　仕事は辛い
これは悪しき流れだ。　だがどこから手をつけていいのか。

この仕事、高速道路のメンテ屋での傭兵隊に入ってすでに２年。　不通２年もあれば仕事に慣れて　一端の熟練兵を気取るものだ。だが　私はまるで上達していない。

当然だ、私は車が運転できぬ。　ひどい居眠り（気絶に近い）をもっている。異常なほど睡眠の質が悪い（すぐに目が覚める）　日本語が苦手だ（自国語にもかかわらず）

そんな人間が社会でうまくいくはずもないが　私自身どうすればいいか分からぬのだ。

監督はどうも私が嫌いらしいし　まぁ私も貴方が大嫌いだ。
其れ故　私は彼の指示などまるで意に介してやらない。　無論同じ指示をチーフや所長がした場合はすぐ行う。
こんな事態がいいはずがない。だが奴への恨みつらみが　それを許さない。

学生時代　政治運動に参加していることが就職で不利になると書かれた触れ文が炎上している様子。
なにね、言いたいことはわかるのだ。奴らは正義の為に動くわけじゃなく　金貨と仲間の《企業をさすカンパニーは軍隊を指す言葉でもある》為に動くわけだし　その結果として世界が回っている。　そこはしかたない。

だがね、彼らはなるほど考えが浅かったのかもしれないが【害悪】【クソガキ】【馬鹿】などと罵るようなものか？　彼らは無邪気に　もしくは必死に　彼らなりに大真面目に正義を考え　そして行動したのだ。　どうしてそれに敬意を払わん。

全て認めろとは言わぬ。　採用担当の言い分もあろうし　また企業の譲れぬところもあろう。だが　たとえアンオフィシャルな場でも　だ、件の活動していた学生諸君を罵って良いはずがない。　人を罵っても良いとき等　その相手に盛大な恨みを抱いた時くらいのものだ。

政治活動してた奴らがうるさい？ならば社会の先達として　【政治活動の危うさ】をきちんと彼らに敬意を払い　【助言】として【貴方の正義は尊重するが　我々の事情も覚えておいてくれないか】とすればいい。　それを【馬鹿な事を！】と罵るように言うのでは誰も聞くまい　誰もそんな企業の物を買うまい。　

何？そんな奴は一部だから怖くないだと？　その一部にも友人がいる　家族がいる。　家族の買い物担当になった彼らは　その企業を避けるだろう。そしてその家庭はその企業を利用せぬようになる。

友人一同の中には同調する友人もいるだろう。　言葉の言い方だけで　確実に御客様を減らしているのだ。

【挑発的な言い方を避けよ。　相手には丁寧に。　目前のそいつもうちの御客様候補だ】

さぁて随分留守にしてしまったな。　紅顔の貴公子も随分くたびれてしまったが３０代初頭の貧者など世界にありふれたものだ。

今の契約先の道路維持会社、私はどうも斯様な【状況に応じて自己判断】の仕事が大の苦手だ。　得意なのはマニュアルとルーチンワークの単純労働だ。

私は【言ってもらわねば理解できない】　【明記してないとわからない】【整備などできない】　【運転などできない】なのにどうして　こんな場所にい続けなければいかんのだ。

アルコールの量が増える。　私が適応できる日が来るのか　その前に酒に潰れるのか。

眠りが浅く　綺麗に熟睡できぬ。

家族などは私にアスペルガーの疑いをかけてくる始末。だったらどうだというのだ。　貴様らが陰鬱に悔やめばマシになるのか。ならんだろう。

さて私は運転ができぬ。バイクならお手の物だが　車は全くと言っていいほどできぬ。
しかし私の職場は運転ができないと仕事に支障が出る。
ではなぜ私はいるのか？

じつは職場の奴ばらがな　私は車の運転ができると勘違いして雇ってしまったのだ。
さぁ収まらぬのは現場のメンバーだ。　車を運転しない奴と同じ給料なのが納得いかんと常常言う。　それは会社に言うがいい、いつでもクビにされてやるぞ。　私もこの仕事限界なのだ。

ごきげんよう友よ。
このアズールはあれから福祉業界（障害者線センター）に仕官し　そして解雇になり、今は高速道路のメンテナンス会社だ。
しかし、どうもこう　私はつくづく社会生活に向いてないらしい。
他人の感情が理解できない。　いや、友の感情などはわかるのだ。　しかし、家族の言葉や感情がまるで理解できぬし、職場の人間に至っては　まるで異民族と会話しているようだ。

まさにジャイナ教徒が創価学会の聖地に行ったような異邦感を感じる。

そして　耳に障害などないのに　なぜか他人の言葉が聞き取りにくい。
上役【ボルトとってくれ】
アズール【はっ？　か　鏡でございますか？さて何処にあるのか……】
ボルトと鏡　まるで合ってない。なのにそう聞こえる。

加えて他人の言葉の意味が理解できない。冗談を冗談ととれず　他人から見れば全く理解できないタイミングで激怒する。
さだめし失礼な人間に見えているのだろうな。
失礼な人間ではあるが　それでも今までは　平身低頭し　下手に出ていたのだが、ここの職場では下手にでようにも　相手の意識がわからぬ。

そりゃあ　私は所謂　気が弱くて無神経なタイプではあるが

しかし、紹介してくれた人の手前　そうそう辞められぬ。六月までくらいは努めぬとなぁ。

で　だ、友よ。
なんと一ヶ月で今の職場をクビになってしまった。
これについては何も異論も恨み事も無い。
原因は私だ、３０日全て立ったままの居眠りをかましたのだから。
前日に７時間〜５時間３０分を寝ていても　昼の１０時になると　凄まじい眠気で立ってられぬ。
かくて作業台に顔をつっこみ　クビとなったわけだ。
今は新しい職場を探すべく　彼方此方に文を飛ばしている。
しかし……斯様な事では私は社会生活が送れぬタイプの人間ではないかな？

そんな文面が脳髄を駆け巡る、無論根拠などないが　私の全ての事柄は根拠などない
よって　この事が根拠がないからといって　外れているとは限らぬ。